comfortable diary



怖気づく心と、固まった決意。

明日から我が愛しの監督の新作『命』が公開されます。
何ヶ月も前から、ずっとずっとこの日を楽しみにしてきました。
でも公開を明日に控えた今、怖気づいてます。
なんでだろうって考えたこと、思いつくまま書いてみるね。

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柳美里という人を、もともと私は殆ど知らなかった。
何か賞をとった作家だということしか。
しかも自伝を書く人もあまり好きではなかった。
芸能人の書く本も殆ど手にしたことはない。

だけど私は本屋で「命」を手にとった。手にとってしまった。
それは、父と同じ病気「癌」がキーワードだったのかもしれない。
装丁が印象強かったのかもしれない。
今となっては何がキッカケでその本を買ったのかは判らない。

でも何かにこじつけるのならば。
きっと「呼ばれた」のかもしれない。そんな気がする。

別に彼女が好きなわけじゃない。それは今でも変わらない。
彼女の人生に共感したり、同情したり、そういう次元でもない。
その突拍子もない実話に私はそのときただただ唖然としただけだ。

だけど私は彼女を受け入れた。

そういう生き方しかできなくて、不器用で、誰かの手がいつも必要で、
もがいているうちに事態はどんどん深刻になっていて。
危なっかしいなぁ、もっと上手に生きればいいのに。
彼女の人生を活字で追いながら、活字の中の彼女を叱咤し、激励した。

テレビをふとつけた。

柳美里のドキュメントをやっていた。本を読んだばかりの私は、ほんの
少しの興味でビデオの録画ボタンを押した。
この間まで写真でしか知らなかった二人が、動き、声を発していた。
活字のなかの2人が、現実のものとなった。

胸がざわざわした。最後には食い入るように見つめていた。

何度も何度もそういう偶然があった。
普段は決してみない雑誌に載っていたり。不思議だった。

そんなとき、篠原監督の次回作が「命」だと聞いた。
一瞬、鳥肌がたった。
そうか、アタシはこのために導かれていたのか。
なんとなく今までの全ての偶然が必然に思えた。

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そんな『命』が、毎日ワイドショーを賑わす「話題作」になっている。
常軌を逸したドラマさながらの実話、売れ筋俳優の起用、安室奈美恵の
テーマ曲、モントリオール映画祭への出品。

怖い、怖い。
どんどん加速していく。どんどん一人歩きしていく。

丁寧に丁寧に作りこんだはずの監督やスタッフや原作者の想いが、周りの
勢いに飲み込まれていっているような気がする。
スキャンダラスで話題性だけの作品と見なされているような気がする。

きっとそういう話題性に便乗し、映画を観て、柳美里の生きかたに共感
できないからと、コケ下ろす人だってたくさん出てくるだろう。

それもその人の自由だ。

柳美里がこれを世に出すのが自由なのと同じように。

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私はこの作品を冷静に観ることができるだろうか。

人間として大好きな監督の作品だということを抜きに、周りの好奇な目を
気にせずに、自分のココロだけでこの作品を観ることができるだろうか。

答えは16日にならないとわからないけれど、(16日に観に行くのです)
私は、私だけは、真っ直ぐな気持ちで、何者にも左右されず、しっかりと
スクリーンを捉えていたいと思う。

そういう気持ちで臨みたいと思う。

監督のあの目で撮られたこの作品を、私もこの目でしっかり観てこようと
思う。自分のなかに起こった波や、起伏、嫌悪、同調、全て否定せずに
受け入れてこようと思う。




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2002年09月13日(金)




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