日々の泡・あるいは魚の寝言

2007年11月05日(月) 誰かの夢を葬る

あるコンクールの審査員をしていたのですが、そろそろ結果も発表ということで、手元に置いていた応募作のコピーを始末させていただくことにしました。

昨日のことです。

一作一作、とじていたホチキスのしんをはずし、手で一作一作破いて、ふくろにつめてゆきました。
大事に、誰かの小さな夢を眠らせるような気持ちで。
このコピーの中に、見知らぬ人々の夢や思いがこめられているのがわかっていますから、大事に葬りました。

私も十代の終わりからコンクールにだして、そして受賞して作家になっていった人間です。用が終わったコピーといえど、粗末にはできません。
はさみで切ることも、痛い感じがしてできない。
だから手でばらし、手でちぎってゆきました。

コンクールにだされた原稿には、下選考がありました。そのあとさらにふたつにわけられたものの、ひとつのグループが私の手元に来ました。
審査はしないといけないので、落とした原稿もありますが、でも、一作一作、大事に拝読いたしました。

今回のコンクールはとても狭い門になってしまったので、落選した作品がほとんどです。
でも、私が読んだ中で、本当に惜しかった作品はいくつもありました。作品としては未熟(ごめんなさい)でも、想いがあふれた作品もありました。一部分にきらめきが感じられる作品もありました。
でもほんと、狭き門になってしまいましたので…

私がいいたいのは、今回落ちた方でも、ここでめげないでほしいということです。すぐに切り替えて、次の作品を書き始めてほしい。
私だって、延々と落選した原稿の山を築いた時代がありました。でも、なんだかんだで投稿し続けて、ちゃんと作家になりましたから。
だから、落選しちゃったあなたも、あきらめないでほしいと思うのです。

もしあなたに才能があり、努力を続けてあきらめなかったら、きっとなんとかなると思うから。

そしてもし、作家になりたかったわけじゃないけど、自分が書いた作品が大事だった方がいたら。愛情をこめて、なにかの記念のような思いで書いた作品を投稿してくださっていたのだとしたら。
今回の審査と相性が悪かっただけだと、そう思ってください。入選したかどうかなんて、作品の価値には関係ありません。
あなたがその原稿を大切なら、それはあなたにとって名作なんですから。


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