さて、数日前、長崎に帰ってきたわけですが。 例によって、東京が恋しくて滅入っています^^; 長崎も良いし、自宅は猫もいていいんですけど〜この閉塞感はいかんともしがたく。 長崎が悪いというのではなく、西新宿で、「村山早紀」を生きている私でいるときの方が、背筋が伸びていて、人として生気があるのが自分でわかるんですよ。 それに私を必要としてくれているひとたちは、断然あちらにいるんですよ。 さみしいんですよ。
気が滅入ると、朝起きるのが辛くなるので、今日は昼過ぎまで寝ていました。
夕方、猫たちの缶詰でもまとめ買いをしておこうかと、外に出ました。 いまはもう、長崎でも六時過ぎにはまっくらになるんですね。 長崎駅のそばの路地を、とことこと歩いていたら、歩道のふとした暗がりに、猫がふわりと横たわっていました。 サビ猫みたいな感じで、でも全体に色素が淡い、甘い柔らかな色合いの猫でした。一才になるかならないかくらいかな。 ひっそりと、死んでいました。
暗がりにいたせいか、ひどいケガをしているようにはみえませんでした。口が少し開いていたのはわかったけれど。 すぐそばの道路ではねられてしまったのでしょう。 親切な誰かが、人も車もふまないところに、よけておいてあげたのかもしれません。 あのあたりは、市場やいろんなお店が近いから、たぶんノラか半ノラさんで、お魚屋さんやお総菜やさんにごはんをもらっていた猫だったのではないかなあ、と思います。かわいがられていたのでしょう。毛並みはふわふわでしたから。
でもね、でもね、と、私はつぶやいていました。 ノラの暮らしもいいことあったでしょうけど、猫は本来、おうちで暖かく過ごすものだよ。ホットカーペットの上やオイルヒーターのそばで、おなかむけてごろごろ寝ていていていいんだよ。 なのになんで、あんな冷たい敷石の上で、横倒しになって寝てるのかな。 クリスマス前の、ひとがみんな笑顔で過ごしている夜に。 冷たいでしょう。寒いでしょう。 死ぬとき、痛くて、不安で、怖かったでしょう。
今日の晩ご飯は、もう食べたのかな? どこへいくところだったのかな?
「ついておいで」と、心で声をかけました。 いまさら猫のたましい一匹くらい、背中にしょっても重くはないから。 はりついておいで。大丈夫、一緒に人生生きていこう。 もう帰るおうちがあるんだからね。
暗い路地を歩いていくと、心が重く沈みました。 死んだ猫のことをおもえば、たとえたましいがはりついてくれているかもしれないとおもおうとも、心が沈むのが人情というものです。 そしてもともと私は今日落ち込んでいたのです。 この長崎の、充分明るいとはいえ、新宿に比べればずいぶんと静かな明かりと、夜の深さが、切ないくらい異境のものに感じられるのですよ。 一歩歩くごとに、さみしさがつのるのですよ。 そんな夜でした。
ただひとつ、自分があの場を通り過ぎたことで、もしかしてわずかでも、あの猫のとむらいになったのなら、それでよかったと思いました。 気が滅入って起きられなくて、外出が遅くなったことも、猫のたましいによいことになったのなら、よかったと思いました。
大きなショッピングストアの抽選会の券がたまっていたので、がらがらを回しに行きました。実はくじ引きはあまり好きではありません。小さなものやかわいらしいものがあたればそれは嬉しいですが、特等や一等賞があたると困るなあ、といつもおもっています。なんていうか、遠慮したくなるから。 ただ今回は、母がほしがっていた液晶テレビその他があったので、がらがらまわしにいったのでした。 案の定、六回も回してすべてはずれるという(笑)くじ運の悪さを発揮して、ふらふらと、本来の目的のとあるスーパーに猫缶を買いに行きました。
重たい気分のままで、生きている猫たちのための猫缶をかごにいれ、レジにもっていきました。レジのひとたちは、みんな頭にクリスマスの帽子をかぶっていました。少し疲れたような笑顔なのは、クリスマス前の店で、ひとしきりお客さんが殺到したそのあとだったのでしょうか。 レジの女性の方は、猫缶を手に取ると、にこりと笑いました。 「みんな猫ちゃんのごはんですね」 「はい」 「今日はね、猫ちゃんのごはん、10パーセント割引なんですよ」 「え、ほんとですか」
予期しない割引って、どうしてあんなに嬉しいのでしょうか^^ おまけに、期せずしてまとめ買いモードで、三十もかごにいれていたので、そりゃもう喜びひとしおというもので。 レジの方は、ひとつひとつ猫缶を手に取りながら、たのしそうに、「はい割引〜これも割引です〜」とレジの機械に打ち込んでくださり、最後、打ち出されたレシートを見て、「ほらこんなに」と笑顔で渡してくださったのでした。 すごかったですよ、猫缶三十個分に、ひとつひとつ割引の表示が記載された、なんだか長いレシート(笑)。
JCBゴールドでさくっと精算をすませる頃には、落ち込み気分もどこかしら消えていき、鼻歌とかうたいたい気分で、かごからバッグに荷物を移していたのですが、ふと、思いました。 死んだ猫が、いま肩の後ろあたりで、よかったにゃ、とかいってくれていたりして、と。
ふと泣けてきて、まばたきして涙のつぶをごまかしました。
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