日々の泡・あるいは魚の寝言

2002年12月05日(木) アウレシア大陸記

今日は、新人作家さんの本をさがして街を歩き、そのあと読んでおりました。
(アテにしていた書店さんになかったので、繁華街をさすらう、思わぬクエストになってしまったという)。

後藤耕さんの、一冊目の本、ポプラ社刊の「アウレシア大陸記」(の第一巻?)という物語なんですが、なかなか楽しい本でした。
この本のことは、同人誌「季節風」の次の号に、これから急いで書評を書かなきゃいけないので、いま、内容を反芻しつつ、どんなふーにしよーかなー、と、考えているところです。
現時点で、面白かったのは、二点あって、一つはこの作品は、いわゆるファンタジー小説のパターン破りを繰り返している物語だというところ。も一つは、徹底した民主主義(アメリカ型民主主義というか、日本の戦後民主主義というか)が背景にある物語だというところです。

舞台はとある異世界です。その世界のある都市では、三年に一回、歌が上手な女の子を選ぶための選考会が行われていて、一等賞を取った女の子は、三年間、歌姫としてあがめられつつ、いろんな街を演奏旅行して回ります。その都市(と大陸)では、歌姫という存在は、女の子のあこがれなんですね。
で、歌姫になりたい、元気で明るい雑貨屋のお嬢さん12才が主人公。
簡単にいうと、このお嬢さんが、夢を叶えたい一心でがんばることによって、大陸の歴史やほろびた文明、はては神話にまで関わる、壮大な事件に巻き込まれてゆく、というお話なのですが…。

まあ、ここから先は書くのをやめておきましょう(笑)。
出だし、50ページ目くらいでおとずれる意外な展開に、私は笑いました。
ここで、こういう「掟破り」のヒロインを設定するということが、この物語のテーマには必要なことだったんでしょうね。
私には、こういうお話で、こういう設定のヒロインはかけないなあ、と、考えた時点で、うーむやっぱり旧世代の人間なのかしら、と思ったことでした。

掟破りの設定や、これから(以降の巻で?)もっとはっきりと書かれそうな、テーマ以外にも、もちろん、物語としても面白く読めるお話でした。
わりと軽くあっさりめで、テンポよく読めるので、小学四年生から大丈夫。
ヒロインの一人称のわりには、男の子向けな感じもします。サブキャラの男の子と、かっこいいお兄さんと、古代のロボットが活躍する冒険ものだし。

しかし、なんていうか…。
「思いこみは世界を救う」…いや、「一人の子どもの夢と思いこみが、結果的に世界も救ってしまうことがある。それでいいよね?」という…。
これは、そういう物語なのかもしれません。

選ばれたものの運命や宿命に苦しみ、背負ったものの重さに呻吟するヒロインがいなくても、救える時は救えるのが世界というものなのかもしれず、そして、そういう世界をめざしてきたのが、戦後民主主義なのかもしれません。


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