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酔っ払った馬の時間 - 2003年02月15日(土)

「酔っ払った馬の時間」という映画を(ようやく)見に行きました.
かつての会社の後輩と見に行ったのですが,二人の都合が合わなかったり,約束した当日に私が寝坊したり….
 紆余曲折があり,ようやく今日見に行くことができました.

 映画史上,始めてくる土語で撮影された映画だそうです.
 舞台はイランの国境に近いイラク領クルディスタンの小さな村.ここで暮らす兄弟を描いた映画です.

 はっきりいって,「映画」を見た気がしませんでした.
 厳しい自然,貧しい生活.子供でさえも,容赦なく働かなければならない現状.真冬の,自分の背丈ほども積もるかという雪の中,小柄な体の裕に3倍はある大きな荷物を背負い,密輸の品物をイラクへと運ぶ仕事.

 まるで,ドキュメンタリーのように見えたのは,おそらくそれが彼らにとって「演技」ではなく,「日常」だからでしょう.

 主人公は12歳の少年.彼は5人兄弟の次男だが,長男は不治の病で働けない.映画の冒頭で,密輸のキャラバンに参加していた父親は亡くなる.そして,主人公の少年が課長となり,一家を支えていく.

 ストーリーの核は「家族愛」だ.
 言葉にすれば陳腐になるかもしれない.けれど,体の成長が止まり,知能も幼児波にしかない長男.手術をしなければ長くは生きられない.しかし,手術をしたとしても,長くもって1年.つまり,手術をしてもしなくても,彼には死が待っている.
 それでも,その長男に手術を受けさせるため,危険で過酷な密輸のキャラバンに参加する12歳の少年.
 そして,手術台が1ヶ月では稼げないと分かったとき,その長男の手術を受けさせることを条件に嫁ぐことを決めた長女.

 「家族を守りたい」
その思いが見ている観客には伝わってくる.

 嫁ぐ姉を見送る次男.そこに浮かぶのはつらい仕事でも泣き言も言わず,ひたすら家族を守っていた家長としての少年ではなく,年相応の,姉がいなくなることが悲しい12歳の少年.そして,家族を守れなかった自分への悔しさもあるのかもしれない.

すべてにおいて,過酷な現状.
ドラマとか,ストーリーとかは見ている途中からはどうでもよくなった.

私の知らない世界がそこにあった
なんという世界だろう.
あの状況にあって,いや,あの状況にあるからこそ,「生きよう」という意志であふれている.少しでも長く.

見終わった後,なんともいえない感覚が残りました.
決して不快な感覚ではありません.

ただ,ひたすら
「この映画に遭えて良かった」
そう,思えました.



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