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■ 木から生まれたものと向き合う
以前、憧れだったひとから聞いた旧朝香宮邸庭園美術館の話。 アールデコの邸宅、うつくしい庭園とオブジェ、素敵なカフェ。 いつか行ってみたいと思いながら、白金という土地柄なかなか腰が重く、展覧会の内容や時期が合わなかったりもしたのですが。 ようやく念願叶って行ってきました。
「舟越桂 夏の邸宅 アールデコ空間と彫刻、ドローイング、版画」
タイトルの「木から生まれたもの」というのは、彫刻の素材がすべて楠であることにちなんで、「ドレスコード」が「木から生まれたものを身につける」というものだったから。 ひっそりと、木の実を樹脂加工したアーティストさんの手作りアクセサリーを身に着けていきました。
さて、肝心の展覧会についてですが。
素晴らしかったです。
ため息が出るほど。
NHK「新日曜美術館」のアートシーンで紹介されていたので、最近の作品である両性具有の「スフィンクス」シリーズについては少しだけ知識を仕入れていったのですが。
聞きかじった知識なんてなくても。
ただ向き合うだけでよかった。
見る人によってさまざまな解釈のできる、謎めいた姿、ただそこに佇むだけで、圧倒的な存在感。
それがまた、驚くほど旧朝香宮邸のアールデコ装飾の部屋に馴染んでいて。
作品保護のためすべてカーテンが閉められ、ほの暗くひんやりとした静謐な空間となっていたのだけれど。
その中に、あたたかみのある楠の肌と、大理石の吸い込まれそうな瞳を持つ、現実と非現実の境目にあるような裸身の彫刻たちが、無言で佇んでいる。
その艶かしさ、魔術的な空気。
あの空間の中でなければ、きっとここまで惹かれなかった。
ただ白い壁に囲まれた展示室の中だったら、解釈の難しい不思議な彫刻とだけ思ったかもしれない。
いくつものスフィンクスと、向き合って。 見つめあって。 不思議な世界と交信したような気分で、夏の邸宅をあとにしました。
特に印象に残った展示について記しておきます。
「戦争を見つめるスフィンクス�供廚猟法垢靴�歪んだ表情と、どこか優美な妃殿下の居室とのギャップ。 あたたかい空間の中で、うつくしい装飾の中で、 そこだけ浮き上がるような苦悶の表情。 胸をぐいとつかまれたような、展示だった。
暑苦しい正義や社会批判はあまり好きでないけれど、自分の手ではどうすることもできない惨劇をただ見つめるしかないとしたら、あんな表情になるのかもしれない。 眼差しで世界を変えられるわけではないけれども、見つめることをやめることはできない。 そういう、現実を超越した、不思議な存在として。 あんなちいさな部屋の中から、彼ないし彼女は、世界を遠く見つめていた。 そんな気がした。
閉館後は、入り口にあるカフェへ。 料亭金田中が手がける話題のカフェということで、以前から行ってみたいと思っていたのでした。 点心や麺、どんぶりなど、カジュアルなメニューが並ぶのですが、すべて出汁がきいていて、上品で本当に美味しかった! 余計な具の入っていない、ベースの素材と出汁だけで勝負しているものばかりで、カフェとは思えない美味しさに感動してしまいました。 きっと料亭でいただく懐石料理はさぞかし美味しいんでしょうね。 縁のない世界の、端っこを覗いた気分になりました。
今回はあいにくの雨天だったので、次の展覧会は晴れの日に、庭園も楽しみに来たいと思います。
2008年08月24日(日)
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