ビー玉日記
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2004年04月27日(火)  シンドラーのリスト 感想メモ

久々にいろいろ考えたので、そのあたりをメモ。

シンドラーの悪党ぶりをもっと見たかった、と書いたけど、私としてはシンドラーが「図らずも人を救ってしまった」というところをもうちょっと感じたかったのだ。
ただのエゴ。でもなんかそういう方が人間味が強調できていいなあ、と思って。

戦争という非常事態は、人間の生活にも心にも様々な影響をもたらす。
他人より自分、というエゴイズムと欲望の露出。
食料や物資の不足。生と死の感覚の麻痺。
非常時にこそ、その人間の本質がわかる。
その時自分はどんな人間になってしまうんだろう。
流されてしまうだけのような気がする。
その方が楽だから。苦しんで流れに逆らうよりも、流されてしまう方を選びそうな気がしてる。

シンドラーの工場に雇われた人たちは、確かに運がよかった。
「女の一生」のコルベ神父のように、「ライフイズビューティフル」の親子のように、収容所から抜け出すことのできなかった人たちは本当にたくさんいたから。

終戦後の「もっとたくさんの人を救えたのに」というシンドラーの台詞は、監督の演出だったんだろうか。
本当に彼がそういう言葉を言ったにしろ、「あの時自分がこうしていれば」という気持ちは、死んだ人に対して誰もが思うことだ。
私にもある。
もっとお見舞いに行っておけばよかった、もっと話を聞いておけばよかった、と祖父が死んだ後、何度か考えてきた。
今更どうしようもないこととわかっていても。

とにかくわかっているのは、今この瞬間を楽しんで、懸命に生きるだけ、ということ。
過去のことを悔いたり、未来のことを憂えるよりも、今自分がどうするか、だ。

たぶんオスカー・シンドラーは、1000人を越えるユダヤ人を救うために、生まれてきた。
人には生きる意味というのがどんなちっぽけなことであれ、誰にでも必ずあるのだと思う。
だとしたら。
私は何をするために存在しているんだろ?
その答えは、きっと生きている間にはわからないだろうけど。
だけど、何かの意味はある。


「ああ……」
 と一人の囚人がつぶやいた。
「なんて、この世界は……美しいんだ」
 みんな黙っていた。ああ、なんてこの世界は美しいのだろう。昨日までこの世界は愛もなく悦びもなかった。ただ恐怖と悲惨と拷問と死しかない世界だった。それが今日、この世界はなんて美しいのだろう。
 彼等はその世界を変えてくれたものがわかっていた。愛のない世界に愛を作った者を……。
(「女の一生」遠藤周作 新潮社)


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