ビー玉日記
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2004年04月26日(月)  シンドラーのリスト

こらえ性がないなあ、と思うんだけど。
見ちゃいました。
「シンドラーのリスト」。

**以下、多少のネタバレあり**

こういう作品は、特にスピルバーグみたいな監督がこういうのを作ると、賛否両論いろいろとあるわけで。
オスカー(アカデミー賞の)狙いだとか、当時散々言われていたのを思い出す。

さすがスピルバーグ、見せ方がうまい、と物語に引き込まれながらも何度もつくづく感心した。
ドキュメンタリーを見るようなカメラの静かな視点。
カメラマンが被写体に歩いて近付いていって対象の動きを追うような撮り方とか。
モノクロならではの光と影の利用の仕方。
素人の私が何を言ったってしょうがないけど、素人でもそう思うくらい工夫が凝らされている。
あとは、音楽の選び方、挿入方法。
要所要所で使われた歌や楽器の音色がそのシーンにぴったりで、音と一緒に印象に残る感じ。

登場人物とエピソードの多い映画は、たぶんどこをカットしてどこを生かすかが命なんだと思う。
いかに時間という枠の中に凝縮して押し込められるか。そこがポイント。
これは物語を書く時に私もかなり苦労するところ。
あれもこれもと欲張るとどうしても「広く浅く」になって、物足りなさを感じてしまう。
この映画はその点ではよくここまで盛り込んだなあ、というくらい満足度が高かった。

贅沢を言うと、シンドラーの悪党ぶりをもうちょっと見せてほしかった。
DVDのおまけに実際にシンドラーに救われた人々の証言があり、その中でも「シンドラーは決して善人ではなかった」といった発言がある。
映画の中で、たしかにシンドラーはビジネスに固執した発言をしてナチスの思想とかユダヤ人のことなんか自分にはどうでもいいんだという態度を見せているし、賄賂を贈ったりもしてるけど、あまり「ワル」ぶりが発揮されていない。
どちらかというとユダヤ人を救うために頑張ったことの方が色が濃すぎて、ただのいい人になってしまっている。
もうちょっと悪行(とまではいかないけど)と善行のギャップがあった方がおもしろいんだけどなあ、とそこだけ物足りない気がした。
絶対なんかもっと悪いことしてると思うんだよね。
「手段はどうあれ、結果的に彼は私たちを救ってくれた」という発言もあるし。
その「手段はどうあれ」がもっと見たかった。

この映画を否定する人もいる。その理由もよくわかる。
たしかにこの題材を使えば見る人に感動を与えるのはわかりきっているし、美談の演出とヒーローを作り上げてしまうやり方が好きじゃない人もいるだろう。
私自身天邪鬼なので、そういうことをまったく感じないわけじゃない。
だけど、これだけのものを作るには相当の熱意と情熱がなければできない。監督の心意気でそれはチャラ。
このこだわりようは並じゃない。長いこと温めてきて、ようやく作り上げたものだというのがわかりすぎるくらいわかる。


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