6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2006年10月30日(月)   似非冬景

──それは、似て非なる冬の景色。


先+先日の耐久絵チャで頂いたお題、を書いたSSの1つ目。
ほんとならば、昨日の内にアップしなきゃだったのですが(汗)
本日にずれこむ罠。←日付は30日ですが、実は31日だったり
遅くなって、すみませんでしたーー((orz

犬ベースで短文。

あの素晴らしき空間を共有した同志(笑)Aさん、Kさん、Sさん、Hさん、Yさんに捧げます。
でも、NOTエロですので、アシカラズ(笑)

どんなお題かというのは、
(11) yako > 寒くなってきたので、寒さに震えるトグサをあっためるバトさんで!(笑)←お題 
原文をそのまま引用するという羞恥プレイを強いてみる罠で告知。

わはは。




































また、冬が来た。
灰色の冬が。

卒塔婆の群れに、沈む北端。
灰色に、染まる択捉。

あの時と同じ、冬が。









「・・・寒」

どんよりと淀む曇天を仰ぎ、溜息と共に吐き出した言葉は、今の状況を簡潔に表していた。

寒空の中、車も使わずに街をさ迷い歩く男の行確。
それをするのに、これほど厄介な季節もない。
これが春だったならば、気を散じることもなく、男の追跡に集中出来たろうに。

溜息がまた、口を吐いて出る。

その吐く息は白く、首筋から忍び込む冷気は、刺す様に冷たい。
どれほど着込んでも、身の内に染み込んでくる様な寒さに、身震いしてしまう。
自分が吐き出した白い息を眺め、無駄な努力だが、手袋をはめた手でコートの襟を掻き合せた。


「生身は柔だな」


その瞬間。
隣を歩く男の低音が鼓膜を撫で。
次いで、手の甲が、頬を撫でた。
普段はその体温を消し去っているはずの男、その、微かな温もりに。

触れた途端、寒さが、消えた。









また、冬が来た。
灰色の冬が。

卒塔婆の群れに、沈む北端。
灰色に、染まる択捉。

あの時と同じ、冬が。


けれど。


あの日、あの時とは。
似て非なる冬が、来たのだと。
その温もりに触れて。


気付いた。










END


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武藤なむ