6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2006年10月10日(火)   BT30題「30) 花に譬えるなら」

BT30題のラストになります。

気がつけば、一年以上、かかっての終幕・・・みたいな?
ワァー凄い遅筆っぷりです(笑)
ですが、30題、楽しんで書き続ける事ができました。
この場を借りて。
お題を作って下さった朝乃さんにお礼を。
素敵お題をありがとうございました!!(深々と礼)

それから、読んで下さった方々にも、ありがとうを!!


で。
30題のラスト話は。
犬ベースの話が少ないかなーと思えたので、犬ベースで締めました。
事件その後、のイメージで書きました。

これは先月末、風邪引いてたにもかかわらず、のりのりで夜更かし絵茶をした際。
ダブルYさんのお色気満載の絵&トークに触発されて、ネタだししたものだったりします。
確か・・・白シャツがどうとか、白が云々とか、萌えツボの話をしていたと思うんですが。
何故か、その絵茶の後、寝ずに一気に書き上げた話は。
一切お色気成分なし、方向違いの話に出来上がったのでした。

───アレ?オカシイナァ??(;゜∀゜)

いや、まぁ。
いい感じに書けたと思っているので、ヨシとします(笑)


私信;Yコさーん、Yーこさーん、ごめんなさいね。
お色気物をあとで持ち寄りましょうネ!と言ってたのに、お色気一切なくて(笑)
ホラ、私は「お色気なし文」がデフォだから。 ←反論は一切、受け付けませんョ☆






























不意に、鼻腔を擽る、何か。
久しく嗅いでなかった、その人工物でない本物の匂いに、バトーは立ち止まった。
数回、鼻をひくつかせ、その匂いを分析し、天然だと確認する。

無色透明の人の群れが行き交う、雑踏の中。
灰色の高層ビルが林立する、新都心の一角で。
総ての感覚を鷲掴みにする様な。
傲慢で鮮やかな、その存在感。



百合か。



匂いの元を辿り、義眼が捉えた物体に、バトーは眉間を寄せた。
通りに面して、硝子戸を開放した花屋から、それは香る。

店内で、ぽつりと佇む、一輪。

しかし、それは無機質の建物の中から、恐ろしく有機的な香りを放っていた。
他の花を圧倒し、己だけが花であるかのように。

擦り抜けていく人の合間から、バトーは無機の義眼で、その百合を見つめた。
あの人形の髪にも、まるで簪のように挿されていた、白い花。
過ぎ去った択捉の情景がそれにだぶり、脳裏を掠めていく。




凄烈な白。
咽るような芳香。

聖女の花。
純潔の象徴。


聖域に咲き誇る、絶対不可侵の女神。




電脳の海に融ける事を選択した女の姿が、自然に浮かび、バトーは内心で自嘲の笑みを漏らした。
しかし。
花開き、少し首を俯けた様に咲く、その姿に。
バトーは、何故だか、あの男を思い出した。
言葉少なに、歩み。
目を伏せながらも、決して、見つめる事を止めない。
柔な見てくれを裏切る強靭さで、現在を、未来を捉えようと足掻いていた、あの生身の男を。


女が拾い上げ、遺していった男。
背中合わせの真実が、一瞬、バトーのゴーストに繋がりかけた。
けれど、バトーはそれから意識を逸らした。
振り払うように、

「馬鹿らしい」

自嘲の言葉を吐き、止めていた歩みを再開させる。
百合の白い姿を電脳から消し去るように、一歩ずつ、離れていく。
しかし、その匂いだけは。
離れていくごとに、強く。

ゴーストに纏わりつく様に、香った。









花は、佇み続ける。
枯れるまで。
枯れる、その最期の瞬間まで。
鮮やかに、誇らしげに。











花に、譬えるなら。
人間という器は、儚さの花弁。
柔らかで在りながら、侵されない魂は、美しさの芳香。


花に譬えるなら。
それは、生まれ、死する、連鎖の蕾。
鮮やかに咲き誇る、永遠の種子。








END


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武藤なむ