6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年12月13日(火)   11のお題 「偶然と言う名の悪魔」

これにて。

「ある二名で11のお題」完遂でございます!

お付き合い下さいまして、ありがとうございました。

しかし、長かった・・・此処までの道程・・・(TДT)
1本目をあげたのが、1月。
最後が、12月。
って・・・・長いはずだよ・・・ほぼ、1年かかってるんだもの・・・・・・・・・orz

うう、なにはともあれ。
11本、書き上げられてよかった。
なんだか、凄い達成感です(笑)


そんな中。
最後の話が、こんな感じでどうなんだろうか?と思ってみたり。
び・・・微妙ーー^^;






























”偶然と言う名の悪魔”というのがいるとすれば。

こんなカタチをしているに違いない。
バトーは、自分の太腿に上半身を乗せて眠っている存在に視線を落とした。
そこには、半裸のトグサが、安らかな寝息をたてて眠っている。
その視界の端に。
取り落とした空の缶ビールと脱ぎ捨てられた水色のジャケット、黒いTシャツが割り込む。
ソファに背を預けたバトーは、まんじりとそれらを眺め、それから大きな溜息を吐いた。


性質が悪いにも、ホドがある。


その呟きは、誰に聞かれる事もなく、バトーの電脳の中に消えた。



──────────────────



「おい、トグサ。もう、そのへんで止めとけ」
バトーはそう言いながら、トグサの手にある缶ビールを取り上げた。
フローリングの床に敷かれた毛足の長いラグマットにちんまりと座っているトグサは、あっという間に不機嫌な表情になり、眉間には深く皺が刻みつけられた。
既にそれは空になっていたのだが、”取り上げられた”ことが気に入らなかったとみえる。
「・・・・・・ぅるさぃよ、だんなはぁ」
やや掠れた声が非難の色を滲ませた。
「─────ったく、飲めねぇくせに」
トグサは、酒を全く飲めない”下戸”という訳ではないが、まぁ、強くも無い。
缶ビール二本も飲めば、許容量を超えるという、その程度だ。

今、取り上げた缶で、5本目。

既に、その許容量を完全に超えて、危険な状態である。
トグサの酒は大抵が楽しい酒で、けたけた笑うか子供のように眠ってしまうか、だったが。
今日の酒は、飲んだ時の精神状態の悪さに左右されて、最悪の酒になっていた。
2本目のあたりでは、ぶつぶつと文句を言い絡んできたけれど、今はダンマリ状態に突入している。
任務で、久しぶりにポカをやらかしたのが、相当のダメージだったようだ。(少佐が、無言だったのも、それに拍車をかけたに違いない)
落ち込むその背に、甘い言葉をかけて慰めてやることは簡単だが、バトーはそれをしなかった。
トグサ自身がそれを必要としないと、知っていたから。
だから、黙って傍にいることを選択して、今に至っていたのだ。
───が。
自分の内に沈んで、こちらを見ないトグサのお守をしてるのは。

つまらない。

というか、はっきり言えば、面白くない。
絡んでくるトグサをあしらっていた方が、まだ愉しかった。
子供じみた感情だとは思ったが、ほっとかれるのは、誰だって嫌なものだろう。
バトーは苦笑を浮かべながら、足元でクダを巻いているトグサの頭を乱暴に撫でた。

「ダンマリはつまらんな。まだ、絡まれてる方がマシだったぞ?まぁ、絡むんだったら、もっと色気のある絡みにして欲しいがな」

半ば、冗談。
出来たら、本気のバトーのぼやきに。
酔って頬を上気させ、目を潤ませたトグサは一瞬、きょとんとした。
それから、バトーの義眼を真っ直ぐに見つめると、薄い唇を引き上げた。
ソファでビール片手に、呆れたように自分を見つめる男の膝に、トグサは手を掛ける。

「だったら。シテやるよ、バトー」

柔らかく甘い低音で囁かれた、その言葉に。

「はあっ??」

バトーは、らしくもなく素っ頓狂な声を上げた。
瞬時に、

なんの冗談だ?

困惑もする。
ゴーストハックか、はたまた、ウィルスか・・・?
なんて、ありもしないことを思ったりしてみたが、これはどう考えても酔った上での言動だ。

ざわつく首筋、弾むはずもない鼓動が跳ねたようなその感覚。

そんな感覚は久しぶりで、正直、バトーは慌てた。
らしくないとは思っても、感情はそう反応してしまう。
が、しかし。
この場合、らしくないのはバトーよりも、トグサの方だったのは言うまでもない。
トグサがこんなことを言うなんて、有り得ないのだから。

「ちょ、ちょっと待て。トグサ、もう一回、言ってみろ?」

自分を取り戻す為とトグサを落ち着ける為に、バトーはやや引き攣った声で、問うた。
こういう時こそ、冷静さが必要だろう。
すると、その問いに、トグサは嫣然と微笑んだ。

「シテやる」

聴き間違いではなかった。
いつものトグサではない。
バトーは大きな溜息と共に、目頭を押さえた。

「完全に飛んでやがる」

バトーの言葉なぞ聴こえていないトグサは、完全に酔いの回った状態で、服を脱ぎ始めた。
ジャケットを脱ぎ捨て、Tシャツに手を掛けながら、何やらブツブツ言っている。

「いつも、バトーが好き勝手シてるんだから、俺が好きにシたっていいよな?」
「・・・・・・・・・・トグサ?お前なぁ、自分が何言ってるか、わかってねえだろ??」

Tシャツを脱ごうとするトグサの手を止めようとしたが、振り払われた。
いつもなら、こんな簡単に振り払われてなんぞやらないバトーであるが。
据え膳食わぬは、という先人の言葉が響いたものか、力を緩めるという不覚に繋がったようだった。
トグサは、気にした風もなく、Tシャツの裾を捲り上げている。

「脱ぐなっての」
「・・・わあってる、から、脱いだっていぃんだ!」
「わかってねぇから、脱ぐなって言ってるんだっつの!!!」

バトーの声には必死の色が滲んでいたのだが、酔っ払いは当然、気付きもしない。
何せ、そんなことなどお構いナシな状態なのだから。


なんて、性質の悪い酔い方をしてくれたのか、この生身は・・・・・・。


自分の投げた言葉が発端になった事に、バトーは知らぬふりを決め込んだ。
そして。
目の前のトグサは、妨害する手がなくなって、Tシャツを脱ぎ捨てることに成功していた。

偶然に呟いた本音が、とんでもない事に発展しやがった。
バトーは、焦る自分を何とか押さえつけ、ここは冷静に対処せねばと心に誓う。
が、どうやら酔っ払いは、そんな余裕を与えてくれる気はないようで。
半裸になったトグサは、バトーの膝の上に這い上がり、にんまりと笑った。
そして、困った表情のままのバトーの顔を撫でると、唇を寄せる。

重ねられた、柔らかい生身の唇、その感触。

歯列を割って誘うような、その舌の動きにバトーは、このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られた。

トグサからの、甘く熱っぽい口付け。

こんな風に誘われて、手も出さないというのは、逆に失礼のような気になってくるから恐ろしい。
トグサからのキスはこれが初めてなのだ。
だから、欲望に正直な人間になってもいいじゃないかと、バトーはトグサの背に手を回しながら思った。
が。

(こ、このままヤったら、後々何を言われるか・・・・・・)

そのことに思い至り、己に生じた熱を散らすことを選択した。
こんな時、義体がモノをいう。
感情の面では、完全に熱を追い払うことは難しいものだが、肉体的には、完全にそれを消し去ることが出来る。
義体によって与えられる理性が、これほど有り難いものだと思ったことは、未だかつてない。
冷静になった脳で、自分の身体に命令を下す。
トグサの背に回した右手を自分の首筋にあるプラグに伸ばすとそこからコードを引き出した。
そして、そのまま腕の中のトグサの髪を除け、露わになったプラグにそれを差し込む。

「酔っ払いは、もう、大人しく寝てくれ」
「ん・・・・・・ッ」

トグサを眠りへと誘うプログラムを注入し、バトーは大きく溜息を吐いた。
がくりと自分の腕にくず折れた生身の身体をそっとソファに横たえ、その茶色の頭を膝上に抱える。
微かな重みに、苦笑が漏れた。



──────────────────



そして、バトーは独り、眠れぬ夜を過ごした。
ぐっすりと眠るトグサを見下ろしながら。







END


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武藤なむ