| 2005年04月13日(水) |
11のお題 「触れない」 |
これは、だいぶ前に表の方でアップした「触れない」のバトさんバージョンだったりします。 別に、表においてもいいんですが。 なんか、自分がむしょーに恥ずかしかったので(笑)
裏におくことにしました。
えへ・・・裏っぽいのを期待した方、ごめんなさい・・・・・orz へタレな私・・・。 あれだけ、絵茶コーナーでは裏全開でやっといてね☆ まったく。 腐女子心は微妙なものです。
片想いバトさんは、書いてると楽しい。 いろいろ、恥ずかしいけども(笑)
触れない。 自分が手に入れられるような、存在ではない。 触れれば。 求めてやまない、心の箍が外れる。
男に、こんなことを想うようになるとは。 しかも、相棒に。 妻も、子も持つ、三十代の男に、だ。
人生ってのは、わからねえ。
バトーは我ながら呆れ、心の中でそう呟いた。 そんな思考を持つようになった自分が、はっきり言えば、可笑しくてたまらない。 が、隠しようもない。 これが心の底に潜む真実というものでもあった。
こうとなっては。 己でも、どうしようもない。 触れたい。 手に入れたい、と。 叫ぶ獣に抗うには、そうとうの力が要ったが。
この距離。 今の、この距離を壊したくない。 その、もう一つの真実を盾に、バトーは、自分自身を律していた。
目の前で昏々と眠り続けるトグサをみて、深い溜息を吐く。 トグサは仮眠室で寝るよりも、共有室のソファに身を横たえ、眠ることが多い。 バトーが、どれほど言っても、この睡眠スタイルは変わらなかった。
この、残酷なまでの無防備さは、どうか?
歯噛みをしたくもなるが、落ち着けと自分に言い聞かせる。 だいたい、ここでトグサを責めるのは、お門違いというものだ。 トグサは知らないのだから。 ここにいる相棒が、自分に対して、特別の感情を抱いているなんてことは。 全く。 露ほども。
わからせて、警戒させるべきか。 と思うが。 トグサに、警戒されるのは、痛い。 とも思う。
任務にも支障が出るだろう。 それは、不本意なことだ。 故に。 まんじりともせずに、トグサの寝顔を眺めることになるのが、常だった。
バトーは、いつものように、もう一つあるソファに腰を下ろした。 暇つぶしにテーブルに投げ出されていた新聞紙を読もうと、バトーが手に取ろうとした瞬間。 ソファが軋んだ。 それに同調するような、身動ぎする音。 ついで、掠れた声がした。 「─────旦那?」 「おう」 ソファから身を起こしたトグサが、目を擦りながら、時間を確認してくる。 それに答えてやりながら、バトーは座ったばかりだが立ち上がった。 「コーヒー、飲むか?」 「・・・悪い。頼む」 トグサはそれに言葉を返し、更に口の端を引き上げて、続けた。 「旦那、どういう風の吹き回し?もしかしたら、今日は雨かも」 「───いらねえのか?」 「いります。お願いします、センパイ!」 寝起きでも憎まれ口を忘れない相棒に、バトーは軽くトグサの頭を小突いた。
コーヒーを手に戻ってくると、トグサはまだ眠いと訴える瞼を必死に持ち上げようと、格闘している最中だった。 乱暴に、目を擦り、額を拳で叩く。 その必死の抵抗に、バトーは呆れた。 往生際の悪い。 「大人しく、仮眠室に行って、寝ちまったらどうだ?こんなとこじゃなくよ」 コーヒーを差し出しながら、忠告するが、トグサはそれを受け取りながらも首を振った。 「いや。止めとく。そんなことしたら、呼び出しがあっても反応できねぇもん」 欠伸を一つ、それから、コーヒーを一口飲む。 そして、まるで子供のように幸せそうな表情をするトグサにバトーは苦笑した。 これが、妻子持ちのカオだろうか。 「あー、目が覚めるー」 「そうかい」 「大先輩の優しさのおかげ」 「なら、もっと感謝しろよ、後輩」 いつもの軽口。 にやっと笑ったトグサは、 「してるよ、いつもね」 そう言って、またコーヒーを美味そうに飲んだ。
何気ない、日常をそこに感じる。 心の底の獣が、なりを潜めるのは、こんな瞬間だ。 それを壊したくないのは、獣も同じか。 欲しいと叫びながら、傷つけることを恐れ、怯む。 ならば。
自制。 叫ぶ獣を飼い馴らし、触れない。 叫びを飲み込み、この距離を保つ。
これが、最善だ。
バトーは、己に言い聞かせた。
|