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 Corpsing/Toby Litt

出版社/著者からの内容紹介
新進気鋭の鬼才が描くノワールの傑作!
最初の弾丸が元恋人で女優のリリーの身体を貫通した。瀟洒なレストランでの突然の出来事だった。つづけて2発はリリーに、そして僕にも2発の弾丸が撃ち込まれた・・・。僕は奇跡的に命を取り留めたものの、昏睡状態に陥った。リリーは即死だった。意識を取り戻した僕は、リリーが妊娠していたことを知った。警察は何も説明してくれない。どうして僕らがプロの殺し屋に狙われたのか、リリーのお腹の子の父親は誰なのか。僕はどうしてもそれを知りたかった。半年後、僕は退院し、そして独自で操作を開始した・・・。


冒頭からむかついている。主人公が半端でなく嫌な男なのだ。「今でも惚れている」という別れた彼女が目の前で撃たれたというのに、それを見ながら拳銃の仕組みや銃弾が人体に入っていく過程を説明して、何になるのかと。

それはそれで、嫌なら飛ばして読めばいいのだが、自分も撃たれて昏睡状態が続き、目が覚めて彼女が死んだことを知らされ、初めて口にした言葉が、「彼女は何分くらい生きていたのか?」とか、「僕に何か言ってなかったか」とか・・・。

普通、死んだと知らされたら、悲しみでショック状態になるんじゃないのか?それも「今でも惚れている」彼女なんだから。なのに、平気の平左で真っ先にそんなことを尋ねるなんて、彼女は死んでも死にきれないだろう。しかも、そんな男に自分の全財産を遺してやったなんて!成仏できないぞ!

あーあ、こいつも自分のことしか考えない、自分勝手な男なのかと思ったが、原文だけでは勘違いしているかもしれないので、翻訳 『リリーからの最後の電話』 にあたってみたところ、訳者のあとがきにも、この主人公はダメ男であるとはっきり書かれていた。ハニフ・クレイシの 『ぼくは静かに揺れ動く』 とか、ベルンハルト・シュリンクの 『朗読者』 の主人公などを思い出して、やな気持ちになった。

世の中強い男ばかりじゃないし、優柔不断だったり、はっきりしなかったり(優柔不断と一緒か)、礼儀知らずだったり、弱音ばかり吐いているという男のほうが多いとは思うけど、実際の社会では我慢できても、愉しみで読んでいる小説の中でまで我慢する必要はないだろう。好き嫌いで判断してもいいと思う。

だったらさっさとやめればいいのだが、ミステリでこんな男が出てくるのも結構珍しいし、とりあえず撃った犯人くらいは知りたいというので、本筋には関係のないところは読み飛ばしながら、早いところ終わらせようと思っている。

しかしこの本、イギリスでの評判は良かったのだが、こうした評判てのは全くあてにはならないんだなあ。日本では、村上春樹を誰も批判できないなどというのも、評判があてにならないひとつの見本のようなものだろう。

自己中心的でダメ男の主人公が好きになれなかったので、かなり飛ばし読みだけど、主人公の好き嫌いだけでなく、ストーリー展開も面白くなかった。これってミステリのジャンルに入るのかな?とも思った。それに、ダメ男の主人公、撃たれて当然だよ、てな感じさえする。何事もはっきりせず、ネチネチしてて、すごくやな男だった。

でも、現実にはこういう男のほうが多いわけで、あなたがはっきりすれば、何事もスムーズに運ぶのよ!と言いたくなる男ってのは、悲しいかな、山ほどいる。そういう男は、自分がそういう立場にあることさえわかっていないし、はっきりしないので、他人が迷惑しているということも認識していない場合が多い。とにかく、最後まで読んだってことが奇跡に近いような本。

2004年11月18日(木)
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