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 少年時代 (上・下)/ロバート・R・マキャモン

『少年時代』(上)/ロバート・R・マキャモン (著), Robert R. McCammon (原著), 二宮 磬 (翻訳)
文庫: 425 p ; サイズ(cm): 148 x 105
出版社: 文芸春秋 ; ISBN: 4167254360 ; 上 巻 (1999/02)
内容(「BOOK」データベースより)
十二歳のあの頃、世界は魔法に満ちていた―1964年、アメリカ南部の小さな町。そこで暮らす少年コーリーが、ある朝殺人事件を目撃したことから始まる冒険の数々。誰もが経験しながらも、大人になって忘れてしまった少年時代のきらめく日々を、みずみずしいノスタルジーで描く成長小説の傑作。日本冒険小説協会大賞受賞作。

『少年時代』(下)/ロバート・R・マキャモン (著), Robert R. McCammon (原著), 二宮 磬 (翻訳)
文庫: 494 p ; サイズ(cm): 148 x 105
出版社: 文芸春秋 ; ISBN: 4167254379 ; 下 巻 (1999/02)
内容(「BOOK」データベースより)
初恋、けんか、怪獣に幽霊カー。少年時代は毎日が魔法の連続であり、すべてが輝いて見えた。しかし、そんな日々に影を落とす未解決の殺人事件。不思議な力を持つ自転車を駆って、謎に挑戦するコーリーだが、犯人は意外なところに…?もう一度少年の頃のあの魔法を呼び戻すために読みたい60年代のトム・ソーヤーの物語。



マキャモンの『少年時代』を一気に読了。下巻は丸1日かからなかった。つまり面白かった!ということ。個人的には、主人公コーリーのお父さんが、古き良き時代の尊敬すべき父親という感じで好き。

マキャモンは初めて読むので、どういう作風か全然未知のものだったのだが、読んでいるうちに、「ああ、これはブラッドベリだ」と思った。その証拠に、巻末の謝辞には、作品を書くにあたって影響があったものとして、レイ・ブラッドベリの名前があがっているし、主人公のコーリーが、クリスマスにブラッドベリの『太陽の黄金の林檎』のペーパーバックをもらい、夢中で読みふけっている場面もある。ブラッドベリほどファンタジックではないが、あの世界にかなり近いものがあると思った。ましてや少年の話であるし、特に夏の最初の日、いきなり翼が生えて、空を飛び回るなんてところは、まさにブラッドベリだ。

また、物語中にはたくさんのコミックが出てくるが、そういう影響もかなり感じる。ということは、マイケル・シェイボンやニール・ゲイマンなどにもどこか似通ったところがあるということかも。

とりあえず読んでみた印象は、マキャモンは不気味なところもあるけれど、人間の基本的な心の部分で、非常に美しいものを描いているように感じた。それに読者を物語の中に引きずりこむ、巧みな文章だと思う。翻訳もひっかかるところがなくて読みやすく、会話部分に全く違和感がなくとても自然だったし(少年ものは会話部分でがっかりすることが多い)、登場する少年たちが妙に子どもっぽくなく(馬鹿騒ぎしない)、変に悪ぶってもいないといったところもいい。ハーパー・リーの『アラバマ物語』と一緒で、主人公は少年だが、語り手(主人公)がすでに大人になって、少年の日々を回想しているというところが、冷静で「子どもっぽくない」文章になっているのだと思う。

感想はたくさんありすぎて、何をどう書いたらいいのかまとまらないのだが、マキャモンはお気に入りに入れてもいい作家だと思う。気にいった作家の作品は、どこが気に入ったのかを説明するのが難しい。細かく例をあげて書いていたら、それこそきりがなくなるし、逆に一言で説明することも不可能に近い。読んでいて、ここは絶対嫌だという部分もないわけではないが(そこが南部的な不気味さなのかもしれないが)、全体として見た場合には、感覚的にはまったとしか言いようがない。

これが短編の場合、嫌な部分が目に付いてしまうと、それがその話全体に影響してしまうのだが(雰囲気を挽回するだけの量がない)、長編なら、それを全体の雰囲気がカバーできるというところが、短編よりも長編のほうが好きな理由かもしれない。

例えば、この中に出てくる「ザ・デーモン」という不気味な女の子のエピソードが、それぞれ短編であったなら・・・これは救われないし、書いた作家も好きにはならないだろう。しかし、いくつかのエピソードが重なって、こんな子でも同情の余地はあるんだと思えるようになるのが長編のいいところだと思う。

それにしても、本当に南部の話はハズレがない。それも特に「アラバマ」を舞台にしたもの。これはどうしてなのだろう?単に私の好みに合っているというだけかもしれないが。。。

2004年02月05日(木)
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