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 アメリカ深南部/青山南(文)・橋本功司(写真)

なんという闇の美しさ。
目につくのは広大無辺の綿花畑である。
圧倒的に不気味な緑の湿地帯である。
夜の熱気に満ちた異形の街である。
―オビより

思い出してみると、カーソン・マッカラーズという深南部の女の作家が書いた「悲しい酒場の唄」という短篇で、ぼくは、アメリカ小説の不気味さに、はじめて感激したのだ。そして深南部の作家たちをさらに読むにつれ、このあたりには独自の時間が流れている、と確信するようになった。深南部は、じつは、アメリカではないのかもしれない、とさえいまは考える。―青山南

半分以上が写真であるから、写真集といってもいいような本。
先日読んだ『南の話』が青山南の本とすれば、こちらはそのアメリカ南部旅行に同行したカメラマンの写真集で、それに南さんが文章をつけたという感じ。おそらく同じネタだ。

アメリカ深南部とは、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、ジョージアといった南部の心臓部である。私も個人的にアメリカ南部に漠然と憧れを持っていたし、今までに読んだ南部の物語はすべて面白かったりして非常に興味があったから、南さんのアメリカ南部に関する著作は、ぞくぞくしながら読む。もっとも南部に興味がなかったり、南部出身の作家の作品など知らないという人には、この本もまた面白くはないかもしれない。

けれども、『南の話』と違い、今度は写真があるから、ほかのアメリカの地域とは何か違った雰囲気を感じるはずだ。南部の小説によく出てくる不気味なスパニッシュ・モスとはどんなものか?フライド・グリーン・トマトとはどんな食べ物なのか?そういった疑問が、写真ですべて解決する。

個人的には、一応疑問は解決するが、文学的な情報の詰まった『南の話』のほうが面白かった。写真も、このカメラマンのセンスはどうなんだろう?って感じ。もう少し南部の奥深さを撮ってほしかったなあと思う。もちろんプロなんだから技術はあるのだろうし、いい写真もあるのだけれど、なにか物足りない感じがする。

大量に撮ったであろう写真の中で、なぜわざわざこれを選ぶのかな?というものがあって、写真集として見たら、きっと買わないだろう。他の写真はどうでも、たった1枚でいいから、引き込まれて目が離せなくなるような写真が欲しい。南部には、それにこたえてくれるような素材が絶対にあるはず。

「なんという闇の美しさ」というコピーはすごくいいと思う。だから、写真でもそういった闇の美しさを表現して欲しかった。重くまとわりつくような闇。湿度のために柔らかくなる光。そういった感覚的なものをとらえている写真が1枚でもあれば・・・と残念でならない。



2003年03月10日(月)
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