紫
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「うぉっ。酒ってこんなにうまかったかな」
父が言いました。
父が飲んでいるお酒は、先日、私が今日の父の日のために買ってきたもの。
さっき、母の手から手渡されたようです。
「うまい。あ〜、うまい」
父の舌鼓(したつづみ)が聞こえてきます。
喜んでくれた様子。
よかったよかった。
「……レモン酒もおいしいよ。レモン酒だって、そのへんの特級酒くらいの値段はするよ」
隣に座っていた母が、突然言いました。
母は、「酒」イコール「日本酒」ということがわからなかったようで、父の「酒ってこんなにうまかったかな」の一言に、ちょっとカチンときた様子。
「レモン酒は、うまいよ」
父が、あわてて言いました。
夜中に「レモン酒泥棒」までするほど、母のレモン酒が好きな父。
作成者である母の機嫌を、うっかり損ねてしまってはいけない、とばかりに、「レモン酒は、レモン酒や。酒は酒や」とフォローとも言えないフォローを続けています。
「レモン酒だって、いい酒やん」
父と母のかみ合わない会話に、贈り主である私は、隣の部屋でひっそりと息を殺して笑っていたのは、きっとばれてはいないでしょう。
今年の父の日の、冷や冷やした3分間でした。
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