紫
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ベランダをふとのぞくと、見慣れた懐かしい葉っぱがにょきにょきと顔を出していました。
「あれ? イチゴ?」
一人暮らしをしていたからずっと育てていたイチゴは、私の度重なる引越しに耐え兼ねて、とうとう枯れてしまったのが、おととしの冬。
毎年、春になると必ず花を咲かせ実を結び、びょーんびょーんとツルを伸ばして株を増やしていたイチゴのために、いくつものプランターを買ってきて、あまりにも増えすぎたために、知人に里子に出していたイチゴ。
大阪に来てから、イチゴの元気がみるみるなくなっていくのがわかりました。
当時の私の「大阪なんて大嫌い」という思いが、イチゴにも伝わったのかもしれません。
今は大阪という土地にも人にもすっかり慣れ、「ボケ」と「つっこみ」にも寛大になり、この土地を「もっと知りたい」と思うようになりましたが、イチゴはもうとっくに枯れていました。
「なんかわからないけど、このあいだからにょきにょき芽が出てきてん」
母が隣にきて言いました。
枯れたとばかり思っていたイチゴ。
じっとずっと土のなかで、芽を出してもいい時期を待っていたのでしょうか。
「来年、花は咲くかな…」
そのイチゴに自分を重ね合わせた気分になり、ふとそんな言葉が口をつきました。
「イチゴが食べられるよ」
母の返事に、胸が熱くなるのを隠しながら、家を出ました。
あの甘酸っぱいイチゴ、来年の春にはまた食べられるといいですね。
おやすみ。
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