紫
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出版社に転職して2カ月ほど経ったころ。
文字の間違いを見逃してしまう、という校正ミスをしました。
まだ本になる前の段階で、「大きなミス」というわけではありません。
そして私自身も、校正の大事さを知らなかったころです。
それでも、私に「編集」を教えてくれていた上司は、私に校正の大事さを口をすっぱくして言っていました。
無口で曲がったことがキライで、いつもぶっきらぼうに仕事をしていて、周囲の人たちからは「偏屈者」よばわりされていたその上司。
自分にも人にも厳しい人でした。
それでも、たまーに休憩がてらにコーヒーを飲みに行ったり、仕事帰りに飲みに誘ってくれたり。
会社から離れたときに見せるその上司の笑顔があったからこそ、いくら仕事で厳しいことを言われても、「ついていこう」と思えたのかもしれません。
私が、生まれて初めて出会った「編集者」でした。
そんな上司に、私の校正ミスを指摘されました。
入社2カ月。ちょうど緊張感が抜けはじめていたころです。
それでも、私にはまだ「編集者」の自覚も芽生えていませんでした。
そんな私に上司は、いつも以上に声を荒げて怒鳴りました。
「あんた、編集のプロなんだよ! もっと責任を持てよ!」
私が「ガツン」ときた一瞬です。
「新入社員」という言葉に、甘えてちゃいけない。
ここにいて、給料をもらっているかぎりは、私は「プロの編集者」なのだから。
それからだと思います。私が自分自身の「プロの目」を意識して、雑誌や本を読み出したのは。
毎日のように本屋に寄って、デザインやレイアウトを盗み覚えたのは。
きっと「仕事」ってなんでもそうなのでしょう。
料理人でもカメラマンでも、営業職でも事務職でも、「プロ」として自負するのではなく、「プロ」の意識をもちながら働くからこそ、その道の「職人」としてのびていくのでしょう。
「プロとしての意識をもつこと!」
会社にいたころ、今度は私が後輩によく言っていました。
どれだけ伝わったかわからないけれど、その言葉を言うたびに、もう編集者を辞めてしまった偏屈者の上司が、「よく言うよ」とどこかで私をにやにやと笑っているような気がしてなりません。
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