椰子の実日記【JOYWOW】
2008年08月31日(日)
敗北感

ホーケンの翻訳をしながら、かつて読んだ清水幾太郎先生 の「敗北感」を追体験している。
清水先生は、歴史家E.H.カーの『新しい社会』を翻訳 された。大学で教え子たちに教材として読んでもらった のだが、感想は「気の休まる暇のない本です」 「易しいように見えて、非常に難しい本です」 というものだった。この場合の大学生は1958年頃の 学生なので、現在の大学生より遥かに学力において 高い人たちだ。
ところが、問題は、カーの本の成り立ちにある。 ラジオ講演なのだ。一般大衆がこの、哲学的で抽象度の 高い内容を耳だけで理解していた、ということ。
ホーケンの『ビジネスを育てる』はBBC放送のプログラムに なっている。対象はビジネススクールの学生ではなく 一般大衆だ。
そして、話題は『Blessed Unrest』に移る。 抽象度が高く、歴史知識も必要、話題が先住民族から WTO閣僚会議、ウォータービジネス民営化問題まで、 多岐にわたっている。これほどの上質の本が、一般読書人 に読まれている、という事実だ。文体も決してぶよぶよ していない。硬度の高い、ひきしまった、媚びない文章だ。
日本人の読書人口のレベルを思うと、「敗北感」を 感じざるを得ない。やはりアメリカはアホも多いが、 できるやつはとんでもなくできるやつがいるのだ。
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