椰子の実日記【JOYWOW】
2005年03月25日(金)
黄昏に歌え
相も変らぬ旅の毎日だが、移動中本が読めるのが 嬉しい。
なかにし礼『黄昏に歌え』(朝日新聞社)読了。 文句なしの傑作だ。 ある時代を彩るものはヒット商品であったり 流行したファッションであったりするが、 やはりぼくにとって、時代を表すものは歌だ。 本書は作詞家としてのなかにし礼氏が自分の 半生を振り返りつつ、時代に色づけていった 歌たちを紹介してくれている。
満州から引き揚げる際、廣野をひた走るつらい列車の 中で、だれかが歌い始めた『人生の並木路』、一人、 また一人と唱して重ね、最後は合唱、みんな泣いていた。 こんなエピソードを読むと、では、現代で、世代を 超えて合唱されるような歌となると一体何なのだろう と思う。昨年洪水被害にあい、バスの屋根でがんばった 人たちも、曲名は忘れたが、何か一つの歌を歌って 心励ましていた。あれは彼らシルバー世代だからこそ 共通の歌があったのだ、という分析をだれかがしていて、 納得した覚えがある。渋谷の交差点で有事が起きたとき、 スクランブルに集う老若男女、一体何の歌でこころ 慰めるのだろう。まさかマツケンサンバではあるまい。
石原裕次郎、美空ひばりなどの正真正銘の大スターの エピソードも勉強になるが、何より、ぼくの好きな 昭和歌謡の歌詞の殆どをなかにしさんが作詞している ことに驚いた。
創作の秘密、そして翻訳の技、という点でも前頭葉が ちりちりする思いがするほど、刺激的だった。
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