半年以上たっても、忘れられないことがあります。 今でもその光景が目に浮かびます。 あえて誰とは言いません。 (ここでは「彼」としておきます)
その日は彼にとっても大切な試合でした。 優勝をかけた戦いといっても過言ではありません。 彼は礼儀正しく,誰からも尊敬される選手として 有名でした。ファンの間でも人気があったと思います。 この試合に対する意気込みも他の選手とは 比べものにならないくらいだったと思います。 もちろん私はその試合を観戦していました。 しかし,彼のチームは負けてしまいました。 相手チームが盛りあがる中,それを背にひき返してゆく 彼の姿に心を打たれた人は数多くいると思います。 私は球場の外で彼ではない,別の選手を出待ちしていました。 ファンも大勢いる中で私はその選手を探していました。 私はその選手に写真をお願いしようと思っていましたが 別のファンの人がお願いすると「すみません。」と言い その場を去ってしまいました。 こんなにも大切な試合の後で,しかも負け。 それなのに写真をお願いする・・・された側は嫌だろうなと気付きました。 しかし私は目の前にいた「彼」を見つけ 写真をお願いしてしまったのです。 “負けた後で気持ち的にも嫌なのに,してはいけないことをしてしまった”と 同時に“さっきの選手みたいに断られるな”と思いました。 驚いたことに彼の対応は違いました。 “はい。いいですよ” たくましい声と優しい声が入り交ざった感じでした。 私は心から“次も頑張って下さい!!”と言えることができました。 ごく一般的な普通の言葉ですが,私は今までにないほど この一言を言うのに力をこめたと思います。 “はい!ありがとうございます!次も頑張ります!” 彼もまた,気迫いっぱいの声で言いました。 相手の目を見て話す選手は実際に体験してきて少ないです。 彼はしっかりと私の目を見て,話してくれました。 それが本当に嬉しかったです。
今,彼はここから遠く離れたところで野球をしています。 近況もわかりません。 あの時,偶然目の前にいた彼ですが, 今では本当にファンとして応援しています。 私はこの体験を機に,負けた試合では選手の写真を撮らないことにしました。
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