SS‐DIARY

2021年12月14日(火) (SS)Thanksgiving Day 塔矢アキラ誕生祭20参加作品





誕生日、ぼくは感謝する。

ぼくを生み育ててくれた両親に。

時に優しく、時に厳しく見守ってくれた兄弟子達に。


この世に生まれて来たことがとても嬉しい。

ぼくとして存在出来たことがとても嬉しい。

だって、だから進藤に出会えたのだから。


(ありがとうございます)


地にも天にも、星にも空にも、日にも風にも、何もかもに感謝する。

幼稚園の先生、学校の同級生、僅かしかいなかった囲碁部の人達にも感謝する。

市川さん、北島さん、広瀬さん、碁会所のお客さんの全てに感謝する。

きっと誰か一人、何か一つでも欠けていたならば、ぼくは彼と会えなかった。

そしてもちろん。


(進藤のお父さんとお母さん)


本当にありがとうございます。あなた方がいたから進藤がこの世にいる。

ぼくは彼と出会えて幸せになった。

本当に、本当にありがとうと、窓の向こうの明けて行く景色を眺めながら思っていたら、情緒もへったくれも無い声に呼ばれた。


「お前、いつまでも素っ裸でそんな所に居ると風邪ひくぞ」


振り返ると掛け布団を持ち上げて、進藤がおいでおいでをしている。もちろん彼も何も身につけてはいない。


「いや、もう毎年だけどさ、正月でも無いのに日の出なんか見てなんか楽しいか?」

「別に……日の出を見ていたわけじゃない」

「だったらなんでだよ?」


ベッドに戻るとすぐさまぎゅっと抱きしめられた。


「ほら、こんなに冷えちゃってるじゃん。十二月の気温舐めるなよ?」

「舐めてない。大体エアコンだってつけているし」


それでも確かに体は冷えた。

抱きしめて来る進藤を振り返ると、すかさず唇を奪われる。


「……しつけが悪い犬だな」

「飼い主がおれに甘いんでね」

「だったら厳しくしつけ直してもいいんだぞ」

「えー?」


いいよおれはもう充分、日々調教されてマスからと。

今度は首筋から肩にかけてキスの雨を降らせる。

キスはきっと体のもっと下まで降りて行くことだろう。


(夕べ散々したのに)


まだ足りないのかと、一瞬、さっきの感謝を取り消したいような気持ちになったけれど、それでも胸の内は愛される喜びに満たされていたので、改めて出会わせてくれた何かに深く感謝することに決めたのだった。


end



塔矢アキラ誕生祭20様参加作品です。今年も開催ありがとうございます。

タイトルはこの日はアキラが世界中に感謝する日であるということで。


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