「あのね」
飲み始めて一時間。
いつもよりかなり早いペースでグラスを空けた塔矢は、突然くすくすと笑いながらおれに顔を近づけて来ると、内緒話のように耳元に囁いた。
「知っていたか?」
「ん? 何を」
「重大なこと。誰にも言っていない秘密なんだ」
「へえ、そんなすげえこと?」
「うん」
実はね、と勿体を付けたように言葉を句切り、それからいかにも嬉しそうにこう続けた。
「ぼくはキミが好きなんだ。絶対言うことは出来ないんだけどね。大好きなんだよ」
「へえ」
「あ、信じていないな? そもそもぼくは―」
言いかけてそのままぱたりとテーブルに突っ伏してしまう。
「塔矢?」
声をかけてもぴくりともしない。
「爆睡かよ」
苦笑しつつ、おれは塔矢に顔を寄せて、耳元にそっと囁いた。
「ありがとな」
おれもおまえが大好きだよと、おれが返す言葉はもう届いていないと解っているけれど、そんなことは構わない。
「愛してる。世界一だ」
起きている時には死んでも言ってくれないけれど、こうして時々駄々漏らしに漏らしてくれるから安心出来る。
酔っている時の塔矢は起きている時の500万倍可愛くて、マジ天使だとそう思った。
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家飲みでも店飲みでもどちらでもいいかなあと。
こんな感じで酔った時にしか本音を言えないアキラが自分的にとてもツボです。
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