SS‐DIARY

2006年12月26日(火) (SS)恋の☆メガラバ

「だから言ったんだ、あんな話真に受けて」
「なんだよ、別におまえには迷惑かけなかったんだからいいじゃんか!」


黙々と食べていた夕食の合間、唐突に会話は始まる。


「だからってキミは人を安易に信用しすぎるんだよ、大体前だって事故を起こしたって友達に騙されて十万も盗られて」
「いいんだよあれは!あいつマジで金に困ってたみたいだし」
「それで? 自分が稼いだ金をドブに捨ててもかまわないって?」
「言ってないだろ、そんなこと」


そして黙々と箸を運ぶ。

夕食のメニューはサーモンフライとさつまあげと里芋の煮物、それに小松菜のおひたしと卵焼き。

卵焼きは進藤が好きなメニューで、だからついこんな時にまで食卓に出してしまう。


「…でもさぁ、んなこと言うけどおまえだっていつだったか門下のヒトに騙されてもう少しでヤられちゃう所だったじゃんか」
「なんでいきなりそんな昔の話を持ち出してくるんだ」
「おまえがおれのことを騙されてバカだって言うからだよ」
「そんなふうには言っていないだろう」
「言ってる、同じことだよ」


拗ねた口調でぼくを睨みながら、進藤の箸は忙しく卵焼きをつまむ。


「あん時おまえなんて言ったよ? おれがいくらアヤシイ、絶対なんか企んでるって言ったのに付き合いの長い知り合いだからって、それで結局先生の留守中に押し倒されちゃってんじゃん」
「だから古い話を持ち出すなと言ってる!」
「だったらおまえもおれのことバカ扱いすんなよ、言い方ムカツクんだよおまえ」
「悪かったな、ぼくは元々こういう話し方なんだ、それが気にくわないのだったら別のもっと可愛い物言いの人を探すんだね」
「おれが本気でそうしたら泣くくせに!」
「泣かないよ」


ただその相手を気の毒に思うだけだと言ったら進藤の頬が怒りで赤く染まった。


「なんで気の毒?」
「こんな分からず屋で狭量でしつこい男と暮らすことになるんだから気の毒だ」


きっとその人はキミのやると言って全くやらない洗濯物を洗ったり、交代でやるはずだった掃除を代わりにやるんだろうねと普段腹にたまっていることを言ってやったら進藤の顔は赤鬼のようになってしまった。


「だったらてめえも約束守って三回ヤれよ」
「ああ?」
「一緒に住む時約束した、一週間に三回は絶対ヤらせてくれるって!」


なのにちっともヤらせてくんないじゃん。おまえがイヤイヤ言わないでヤらせてくれりゃ励みになって家事でもなんでもやってやるぜと言われて今度はぼくの頬が熱くなった。


「それじゃなんだ? ぼくとのSEXはたかだか洗濯や掃除とそんなものと同等だと?」
「んなこと言ってないじゃん」
「同じことだろう?」


随分安く見積もられたものだと、本当に腹が立ってきたのでとげとげした言葉を隠さずにぶつける。


「だったらぼくはこの先ずっと掃除と洗濯をするよ」


キミの安い×××を突っ込まれることに比べたらその方がずっとマシだと、その瞬間の進藤の顔は写真に撮っておきたいと思った程だった。

切れる寸前、沸騰して怒りに我を忘れている。


「へー、そう。そうか、わかったよ。悪かった安くてさ」
「キミが掃除洗濯と同列にするから悪いんだろう」
「どうせおれのは緒方センセーみたいにデカくて長くて満足出来るもんじゃありませんよ」


ってなんでそこで緒方さんが出てくるんだと言いたくて、でもこっちも既に冷静では無い。


「ああ、そうだね。緒方さんくらいあったらぼくももっと可愛げのある態度をとることが出来るかもしれないよ」


精々努力して欲しいものだねと、言った時に進藤が箸を置いた。


「ごちそうさまっ!」


あれだけ怒り狂っていたのにそれでもきっちり食べてある。


「おそまつさまでした!」


ぼくもぼくで丁度食べ終わり、箸を置くと茶碗と皿を持って流しに向かった。


「卵焼き美味しかった。塔矢のバカ!」
「どういたしまして、今日の卵は新鮮だったんだよ。進藤のわからずや!」


そして乱暴にシンクに食器を置くと彼はいきなり水を溜めだして、それから汚れた食器をぼくの分まで洗ったのだった。


「洗ったぞ、くそっ」
「ありがとう、もう顔も見たくない」


当分絶交だと、睨み合ってそれぞれ別の部屋に閉じこもる。


本当に進藤はバカで短気で考え無しで腹が立つ。

もういっそ別れてやるかと思いつつ、布団に潜り込むとドアに向かってぼくは怒鳴った。


「おやすみっ」


数秒遅れて返事が返る。


「おやすみっ」


そして腹の中でぐるぐると渦巻くいらだたしさと彼への不満を数えながらぼくは一人眠るのだった。



これがぼくたちの日常。

耐えない喧嘩、醜い言い争い。

なんて低次元な戦いの日々。

でもそれでもぼくは意外にもこの日常を非道くこよなく愛しているのだった。






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ただひたすら、喧嘩を書きたかったと、そういうことです。

本当はもっと荒っぽく派手にばしばし殴り合って喧嘩してるのが書きたかったんだけどなあ。

日常こんな感じです。結構互いに非道いです。


別にもっと長いシリアス?バージョンもあります。もう書いてありますのでそれもそのうち(^^;



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