SS‐DIARY

2006年10月21日(土) (SS)人から見たらどうだろうとも


「悪いんだけどちょっと来て」

そう言われて、ホテルの彼の部屋に引きずり込まれた。

「なんだ? キミ、もう少しで時間だろう?」

キスでもせがまれるのかと思い、呆れた気持ちで軽く睨んだら進藤は少し強ばった顔で「うん、だから悪いんだけどズボン脱いで」と言ったのだった。

「しっ―――――」


進藤っっっっっ!! と怒鳴りつけなかったのは精神力の賜で、でも目にはそれがはっきり出ていたと思う。


「こんな時にキミは何を馬鹿なことを考えているんだっ!」
「え? あー、違う、違う」

たぶんおまえが考えていることと全然違うから、だからお願いだからズボン脱いでくれと言われて仕方なく言う通りにしてやった。

「あ、下着まで脱がなくていいから」

てっきりそういうことかと思ったのにどうやら本当にそうでは無いらしい。

「一体キミは何を――」

何をするんだと言いかけた時に、進藤が屈み込んでぼくの前に頬をすり寄せたのだった。

「きっ―――」

変態だっ!

キミは変態だと叫びかけてやめる。進藤があまりに愛しそうに頬ずりしているからだ。

「温かい」
「…………そんなことをして、何かキミは嬉しいのか?」

今までも彼の行動は理解出来ないと思うことが多かったけれど、今回のは輪をかけてわからなかった。

「こんな……こんな日に、しかももうすぐ始まるのに」
「うん、だから」

言って進藤は苦笑したように笑った。

「なんかさ、こういうのいい加減もう大丈夫だと思ったんだけど、だんだん時間が迫って来たら緊張してきちゃって」

手の震えが止らないからおまえに来てもらったんだと進藤は言った。

「慰めてなんかあげないよ」
「慰めてもらうつもりなんか無いよ。でも…少し落ち着くかなと思って」

言って進藤は犬のように鼻先をぼくの足の間に潜り込ませた。

「すげー…いい匂い。おまえの匂い、おれ大好き」

えっちしている時の匂いだと言われてカッと顔が赤くなった。

「進藤、いい加減にしないと!」
「もうちょっと。元気な時のおまえも好きだけど、今みたいに柔らかいのもすごく好き」

触り心地最高と言われて、もうどうでも好きにしてくれという気分になった。

「終わったら…生で触ってもいい?」
「いいよ」
「勝ったらとか言わないの?」
「いいよ、勝っても負けても、キミはきっといい碁を打つはずだから」

だから結果がどうでも好きにしていいと言ったら進藤は笑った。今度は苦笑では無くて、心からの嬉しそうな笑いだった。

「そっか…そう聞いたらちょっと元気出てきたかな」
「ちょっとじゃ困る」
「うん、もう大分元気」

そして立ち上がると、ぼくの下ろしたズボンを上げて、ご丁寧にチャックとベルトまで閉めてくれた。

「約束……な?」

言ってぼくを抱きしめると、ちゅっと軽くキスをする。

「終わったらご褒美」
「大丈夫、約束は守るよ」

もう一度抱きしめようしたのを押しとどめてネクタイを引くと、ぼくは今度は自分から彼に深いキスをした。

「…その気にさせたんだから、キミは例え負けても責任を取れ」
「わかった。わかりました」

最高にイイ気持ちにさせてやるからと、言って進藤は改めてぼくを強く抱きしめると気持ち切り替えたように、厳しい顔で部屋を出て行った。



開始時間5分前。

二年連続挑戦して破れ続けた本因坊戦最終。

彼は桑原現本因坊から勝ちをもぎ取るために、戦いに一人赴いたのだった。

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すみません、なんかびみょーな話で。でも書きたかったの。


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