SS‐DIARY

2004年07月24日(土) (SS)Here I Am

「―っ」

突き上げられるようなうねりに、叫ぼうと開けた口をキスで塞がれた。
そのまま息の一つも逃さないように、彼はしっかりとぼくをかき抱くので、苦しさのあまり涙がこぼれた。

「塔矢」

とうやと、あんなに優しくぼくの名を呼んだその同じ口が、今ぼくを獣のように貪り食らう。


「あ―」

内側からも外側からも記さなければいけないのだとでも言いたげに、体中に赤い印をつけるその口が、舌が、最後の息も飲み込んで、ぼくは彼に繋がったまま気を失った。





目を覚ましたのは、顔に何かしずくが当たったからで、雨かと思った。
でも室内で雨が降るはずはないしと、思った所でようやく目を開けた。

「塔矢っ」

即座に叫びが上がり、彼が覆い被さるようにしてぼくを抱きしめた。

「よかった」

おまえ死んじゃったかと思ったと、子どものように泣きじゃくるその頭をぼんやりと抱える。

「進藤…」
「なに?」
「ちょっと苦しかった」
「うん―うん、ごめん」

もうしない、絶対しないと言いながら、でも彼はまた繰り返すのだろうなとそう思う。

彼は―抑えることができない。
感情のまま、ぼくの欠片も残さないようにと貪りたくなる獣の衝動をどうしても抑えられない。

彼のSEXは叫びのようだといつも思う。

おまえはおれのものかと。
その全てがおれのものかと。

何かを無くした子どものようだと。



「絶対いなくならないで」おまえは―と、彼を愛情の上でこんなに不安定にした誰かを恨めしく思う。

失うことを恐れるあまり、彼はいつか失うかもしれない。
それでも確かめずにはいられないのだから。



「ごめん、塔矢…怒った?」

おれのこと嫌いになった?と泣きはらした目で聞いてくるのでなんだかぼくも泣きたくなった。


愛にこんなに不器用で。
でも絶対だれにも渡さない。

「大丈夫だから―来て」


子どものようなこの男の全てをいつかぼくで満たしたい。

「愛してるよ進藤」



キミになら、ぼくは殺されたってかまわないのだから。



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別にDVのお話ではありませんが、えっちをする時に文字通り獣になってしまうヒカルと、それを受け止めようとするアキラの話です。

何かを無くしたことのある人は、それが傷になって変な所で変なふうに執着したりするもんなんじゃないかと思います。

キミにぼくは全て見せている。そうアキラが言ってもその言葉を感覚で信じ切れなくて、もっともっとと追求してしまう。
そんな、これはちょっと病んだヒカルです。


タイトルは映画「箪笥」の(おいおい)キャンペーンソングです。ちょっとエスニックな感じですが今現在私内アキラソングです(笑)

ヒカルとえっちしてる時のアキラにぴったしです。←おい(^^;

歌詞こんな感じデス↓

あなたは わたしを理解し 私に見せてくれる。
本当の私の全てを
あなたは私を救い 私に与えてくれた こう言える強さを

さあ これが私よ
あなたの愛に応えるため ここにいる

決して逃げたりしない しっかり繋がっていたの

今ここで生きるの 生きていることを感じながら

song/sertab



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