| 2004年06月22日(火) |
(SS)愛しさと切なさと心強さと(2) |
終わった後に眠らずに
いつまでもじっとおれの顔を見ていることがある。
「眠れない?」と聞くとゆるりと首を横に振り「違うよ」と薄く微笑む。
眠れないんじゃなくて、眠りたくないだけだと。
なんでと尋ねたら、あいつは少しためらってから俯いて言った。
「本当にぼくがキミをもらってしまって良かったのかなと思うから」
その幸運を噛みしめているんだよと、ふざけているわけではなく真面目な口調で言う。
「だってぼくはキミに値しないような人間だから」
どうしてキミを得られたのかわからないと。
そんなことを正気でどうして言えるのか。
だってそれならおれの方が、どうしておまえを得られたのかわからない。
こんなにキレイで こんなにいじらしい。
どうしてこんなに美しい人間が、おれのようないい加減な人間を好きになってくれたのだろうかと、毎日その幸運を噛みしめていると言うのに。
でもそれは
言葉で言っても伝わらないような気がしたので
ただ愛してると繰り返したら、あいつはおれを抱きしめて「ありがとう」とつぶやいた。
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