「なあなあ、あのさ」
何をするでなく、ごろごろと寝転がっていた休日。 唐突にぼくの方に顔を向けると進藤が言った。
「次に生まれ変わった時、もしおれがオンナだったとしてもまた好きになってくれる?」
何をいきなりと笑おうとして、意外にも真面目な顔をしているのでこちらも真面目に答える。
「…うん、キミが女性でもきっと好きになるよ」 「じゃあ、今みたいに男同士でも好きになってくれる?」 「男でも女でも、犬でも猫でも虎でも、それがキミならぼくは好きになるよ」とそう言うと進藤はほっとしたような顔になって笑った。
「よかった。さんきゅ」 「なんでいきなりそんなことを?」 「んー?別になんでってことは無いんだけどさ」
あんまり暖かくって、それでもってヒマで、ぼんやりと色々なことを考えていたらふと思ったからと進藤は言う。
「おれが今のおれじゃなくてもお前好きになってくれっかなぁって」 「そんなの―」
好きになるに決まっている。 だってキミを好きでない自分なんて考えることも出来ないから。
「じゃあ逆に、もし次の生でぼくが女性だったらキミは好きになってくれるのか?」 「え?んなの当たり前じゃん。おまえきっと美人だし、頭いいし、好きになるに決まってる」 「美人じゃないかもしれないよ。キミが好きなタイプじゃないかもしれない」 「そんなこと」
進藤はそこまで言って高らかに笑った。
「あるわけない。つーか、おれおまえだから好きになるんだもん。顔なんか関係ないっつーか、お前だったらおれにとってはいつも常に「美人」なんだって」 「進藤…それ無茶苦茶」 「なんで無茶苦茶? ホントのことしか言ってないのに」
おれもお前が男でもオンナでも人間でなくてもきっと好き。絶対好きと言われて顔が赤く染まった。
「あ、それともおまえ、もし次に生まれ変わった時、おれがおまえの好みのタイプで無かったらダメなの?フっちゃう?」
心配そうに聞かれて笑みがこぼれた。
「…キミがどんな姿でも好きになるってさっき言ったじゃないか」 「もし、碁をやってなくても?」 「その時はぼくもやっていないかもしれない」 「頭バカでも?」 「それは少し努力しろ」
ちぇーと言って、でも拗ねた風でもなく進藤はぼくの側まで転がってくると、ぴたりと体を寄せて目を閉じた。
「とりあえず、次に生まれ変わって何になったとしてもこんなふうに側にいさせて」
ずっとずっといさせてと、そう言って手を伸ばし、ぼくの手に指を絡ませた。
「大好き、塔矢」 「ぼくも…キミが好きだよ」
キミが望まなくても、何度生まれ変わってもきっとキミを離さないよと言ったら指に力がこもった。
「うん」
離さないでと言って、それから進藤は身を起こし、ぼくの頬に優しくキスをしたのだった。
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