SS‐DIARY

2003年09月12日(金) 日記+?8/23(ヒカル)

「こんなの肉じゃねぇ」

今日は一日ごくろーさんと、塔矢の引っ越しの後、ハンバーガー屋に連れて行ったら和谷はふてくされたように言った。

「だって、おれ、肉だって言うから来たんだぞ、肉ーっ」
「でもおれ、なんの肉かなんて言ってねぇもん」

総勢男四人で肉なんて食べに行ったら幾らかかるんだと思い、(まあ、塔矢は数に入らないけど)ひたすら、ハンバーガーで押し通すつもりだったおれは、和谷の猛烈な抵抗にあってしまった。

「ごめん、和谷くんぼくがおごるから」
見かねて塔矢が口を出した。

「いや、いいよ。ぼくたち自費で食べるから。なあ、和谷?」
伊角さんにうながされて、でも和谷はまだ拗ねている。

「ダメっ!!どうして塔矢も伊角さんも、こいつを甘やかすんだよ。こいつおれのこと肉食わせてやるって言って騙したんだぜ? だったら肉。絶対肉おごれ」
「だーかーらー、ハンバーガーだって肉じゃんか」

店の前で一体何をやっているのかと思う。
「進藤、もういい加減にして焼き肉屋に行こう。手伝ってもらったのはぼくなんだから、ぼくが払うから」
「いや、ダメだ、絶対、進藤がおごれーっ!!!」

そんな押し問答をどれくらい繰り返しただろうか、唐突にあいつの携帯がなり始めた。
「はい…」
誰かと話し始めたあいつは、しばらくして電話を切って奇妙な表情を浮かべておれたちを見た。

「あの…今の母からで…なんか…冷蔵庫の中に焼き肉の材料が入っているから『手伝ってくれた方にごちそうしなさい』って…」

一体いつの間に入れたんだろうと、ひたすら不審そうにぶつぶつとつぶやくあいつをよそに、和谷はひゃっほう焼き肉〜と躍り上がった。

「しゃーねーなー、じゃあ進藤はビールで許してやるよ」
「おまえザルじゃん、一体いくらおごらせるつもりだよっ」

また言い争いをしていると、再び塔矢の携帯が鳴った。
「…え?、あ、はい」

「今度はなんだって?」
口調でまた親からだとわかり、聞いてみる。

「冷蔵庫…ビ…ビールも入っているからって」
「おまえの親、そこらでおれらのこと見張ってんじゃねえの?」
冗談で言ったのに、あいつは真剣にまわりを見てから携帯の電源を切った。

「あー、そうだ、肉食うと最後にアイス食いたくなんねぇ?」
和谷が言うのに、塔矢はじろりと睨みつけた。

「もし本当にお父さんたちが聞いていたら困るから、もううかつなことは口にしないように」
忍者じゃあるまいし、どこに潜んで聞いているんだよとバカ笑いしつつ、部屋にもどる。

ちょっとだけ、あいつの親が焼き肉パーティーの用意をして待っているんじゃないかと思ったけれど、さすがに中には誰もいなかった。

けれど…。

「ああっ??!!」
冷蔵庫を開けて中を確認していた塔矢が、冷凍庫を開けた時に小さく叫び声をあげた。
「なに?」
手招きをされてみんなで中をのぞきこむ。中には一リットルサイズのバニラアイスクリームの箱が、どんと置いてあったのだった。

「てめぇの親、過保護過ぎ」

大笑いしながらそう言うと、塔矢は苦笑いとも泣き笑いともつかない顔をして、「そうだね」と言った。

さすがにもうその後は、怖くて誰も「何が欲しい」などとは言わなかったけれど、これからは取りあえず、Hをする時はおれの部屋でやろうと心密かに決めたのだった。


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