ルヒ誕直後にエーサン小咄
2006年05月06日(土)
島に寄る前から、絶対に寄ろうと決めていた店。 昔ゼフの口から聞いた、彼がグランドラインで出会った腕利きコックのレストラン。 それほど格式張った店ではないが、それでも食事時でもガキみたいに大騒ぎの船の男共を連れて行くような店じゃない。 じっくりと料理を味わいたくて、敢えて一人で出かけたその店で、サンジは意外な人物を見た。
案内されたテーブルから、個室とはいかないまでも、そこだけ他のテーブルからは離れている中二階のテーブルで、スーツ姿の二人の男が食事をしているのが見えた。 そのうちの、若い方の男に、サンジの視線が釘付けになる。 光沢のある淡いグレーのスーツに黒のドレスシャツ。タイは水色がかったシルバー。銀縁眼鏡をかけ、長めの黒髪をワックスでラフに後ろに流している。 きっと、自分でなければ気付かなかっただろう。 親指を縁に置いて、中指でリズミカルに机の角を弾いている。何か考えている時の、彼の無意識の仕草だ。 間違いない。少々胡散臭いながらも、スーツ姿のビジネスマンの様な男は、白ひげ海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エース、その人だった。 初めて見る彼のそんな姿に、サンジの目は釘付けになる。 どんなに寒い土地に行っても、コートの下は半裸な彼だ。きっと、余程の事情があるに違いない。 あまりジロジロと見ていてはまずい。きっと何か、仕事上の理由であんな姿をしている彼の迷惑になるだろう。そう思いながら、目が離せないでいた。 視線に気付いたのか、エースが何気ないふうを装ってこちらに目を向ける。 抜け目無く店内を見回す視線が、サンジの上で止まる。僅かに眉が上がる。 目線を正面に戻したエースが男に何か話しかける。男の視線がエースからそれて、隣りのテーブルに移った瞬間、彼はそれとわからない程かすかな目配せを送ってきた。
相も変わらず不始末をしでかしてくれた元部下を追っての航海中、本船からちょっとした仕事の指令が届いた。とある重要人物に接触して、品物を渡す。ただそれだけの仕事に、深くも考えずに了承した。 しかし、本船から遣わされたクルーから、男に渡す品物と一緒に、スーツ一式を渡された時には、思わず溜め息を漏らしてしまった。 どうせたまたま近くにいたからお使いを言いつけた程度なのかと思っていたが、幹部クラスが届ける事に意義がある、などと言う。しかも、何やら向こうの指定したレストランで正装してお食事ときた。 全くもって面倒くさい。相手の立場上、何があっても海賊と繋がりがあると思われてはいけないと、念には念を入れたらしく、小道具にインテリっぽい眼鏡まで付いていた。もう絶対おやじは面白がっているに違いない。 先方にあらかじめ渡しておくとかいう名目で、写真まで撮られた。それを嘘だとは言わないが、絶対に同じ写真が本船で笑いの種にされるに違いない。 全くおもしろくない気分で食事をしていたら、驚いた事に、そのレストランにサンジがいた。 目をまんまるに見開いてこちらを見ているから、少々焦ってそっと合図を送った。 すぐに了解してそっと目を逸らした彼は、それでもよっぽどこちらが気になるのか、その後もちらちらと視線を寄越す。 そりゃそうだ、着た切り雀…というよりも、裸がユニフォームの様な自分しか知らない彼にしてみりゃ、この格好は珍しいだろう。まったく恥ずかしいったらない。 だけど、目の前の男の視線が逸れたとき、再び目で合図したら、彼は遠目でもわかる程に真っ赤になった。 サンジ……何、その反応。
男と握手をして席を立つ。 外に車を待たせている男をその場で見送って、店内を振り向けば、サンジの姿はもう無かった。 まあ、自分のヤボ用もこれで終わった。今日の朝の時点までにこの島に入って来ている同業者は全てチェック済みだ。彼等はその後に島に着いたのだろう。ログが貯まるのに、五日。会う機会はまだある。 そんな事を思いながら店を出て、港に向かって歩き始めた時、 「お兄さん、遊んでかない」 路地から聞き慣れた声。 「サン―――おわっ!」 振り返る間もなく、腕を取られて強く引かれた。 逆らえない力じゃない。それでも彼に抵抗する必要など無いので、むしろ嬉々として路地に引きずり込まれる。 一言もなく、サンジはエースの首に両手を絡ませて、少々強引に引き寄せると、そのまま壁に寄り掛かった。 彼を押しつぶさないように、両手を壁に着いて体重を支えながら、久しぶりに会う恋人の夜目にも白い顔を見下ろせば、何やらキラキラと潤んだ目で上目遣いに見上げてくる。 「久しぶり、元気…」 言い終わらないうちに、唇が押し付けられた。後頭部に手を回して、髪を弄りながら、誘う様に下唇に噛み付いて来る。そんな彼のお誘いに否やがあるはずもなく、久しぶりに恋人の柔らかくて甘い唇を思う存分堪能する。 「どうしたの、サンジ。珍しく積極的」 奪い合う様なキスを散々した後に、そう声をかければ、彼は紅潮した顔で息を切らしながら、どこか恨めしそうな、切羽詰まったような顔をする。 「それはこっちのセリフ。どうしたんだよその格好」 「ああ、お仕事でね」 照れ隠しに、おどけた様に眉を上げて苦笑する。そんなエースに、サンジの眉が切な気に寄せられる。 「…ああ、もう!」 焦れたように言うサンジに、訳がわからなくて伺う様にその目を覗き込む。キスの余韻でか、彼の瞳は熱っぽく潤んでいる。 「畜生、あんた、なんていい男なんだ!」 「………ありがとう」 ジャケットの襟ぐりを乱暴に掴み上げられて、まるで怒ったような口調で言われ、エースは「俺今、褒められてんだよな?」と首を傾げた。 全く知らない人になっている恋人に困惑しまくるエースに、彼はさらに追い打ちをかける。 「エース、したい、しよう!今すぐ!!」 一瞬その言葉の意味が理解できなかったエースは、時間にして10秒程固まった後、ものすごく間抜けな答えを返す。 「…えーと、今ここで?」 こと性的な事にはひどくシャイで、直接的な会話すら恥ずかしがってなかなか乗ってこないはずの恋人のあり得ない発言の数々に、ちょっと腰が引けてたりして。 「…ああ!ここで…はもったいない!!」 ものすごく苦悩する人のように、頭を掻きむしってサンジは叫ぶ。 「あ、あのー、サンジ?」 恐る恐る声をかけるエースを、サンジはキッと睨み上げた。 「俺がいちから全部脱がしてやるんだから!」
どうやら滅多にしないエースの正装は、いたくサンジのお気に召したようだ。 理性のタガが外れて、別人格が顔を出すくらいに。 「…気に入ってもらえて嬉しいよ」 引き攣った笑顔でなんとかそれだけ言うと、押されっぱなしのこの状況をとりつくろう様に、エースはすっかり熱くなってる恋人の肩を抱いて、自分のヤサに案内すべく歩き出したのだった。
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ヘタレエース。 この後エースのヤサで、馬乗りになったサンジにネクタイだのワイシャツ等をむしり取られて、騎乗位エチーになだれ込み。
船長お誕生日おめでとうございます。 今年は何もできなくてごめんなさい。 タラちゃん、不甲斐ない私を許して下さい。
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