小咄6
2004年01月07日(水)
TOPの年賀絵を下げました。 そしてWJ。 お兄さんカッコイイよ!まるで取って付けたようなエンディングで、ヲダっちそれってどうよ、なんてツッコミを入れつつも、でももういいよ、お兄さんがいてくれればそれで。 ああ、しばしの別れかそれとも永の別れか…早く本編にも帰って来て下さい。
去年の暮れ、実はうさこさんにWJ兄表紙だけ見せてもらってたんですが、何を勘違いしたか、明日発売だから明日まで待とー♪などと年末進行のことをすっかり忘れ、本編は自分におあずけをくらわせたガブ。 はっと我に返れば年明けまで見れないんじゃん!って訳で、自業自得とは言え、焦らしに焦らされて昨日、WJ発売日。 ――――サンジいねーじゃん。
なんだよー。これはどうなのよ、去年のうちに知っといた方がよかったのか、それとも儚い夢だったとはいえ、年明けのお楽しみに希望を持てたから良かったのか(大袈裟)。
まあ、何はともあれ、お兄さんSee you again企画(なのか?)、小咄 …実はクリスマスエーサンも新年エーサンも書けなかった(兄×ひよこはさくっと書いたけど)無念さから書いた話だったりして。 本家に上げようかとも思ったのですが、クオリティもさることながら、何よりこっ恥ずかしすぎる内容なんでやっぱこっち!
---------------------------------------------------------- チョッパーの誕生日から、そのままクリスマス、忘年会、そしてニューイヤーパーティーと、宴会続きで酒の抜ける暇のなかったメリー号のクルー達も、ようやく素面に戻る頃。 サンジ入魂のおせち料理も皆の胃袋にすっかり収まって、少々うら寂しい気分で重箱やら正月道具を片付けていたら、ナミが突然素っ頓狂な声を上げた。 「サンジ君、エースの事が新聞に載ってるわよ!」 「え?」 ラウンジのテーブルでかもめ新聞を読んでいたナミの元に慌てて駆け寄る。 「エース、3日前に○○島で島に居ついた小物海賊の一団を壊滅させちゃったんですって。島の人たち、その連中にひどい目に合わされてたみたいで、エースったらちょっとしたヒーロー扱いよ」 「ホラ」とナミが指差す記事を見れば、ほんの小さな記事ではあるが、確かに彼の名前が載っていた。手配書からコピーしたと思われる、粒子の粗い写真が添えられている。 「へー…でもエースのことだから、成り行きでそうなっちまっただけなんだろうな。きっとヒーローとか言われても、「へ?」って感じだと思うぜ」 「あはははは、らしー!」 屈託なく笑うナミに、「ね」なんて笑いかけながら、サンジはその記事に目を落とす。 そう、きっとただの行きがかり上。きっとまた黒ひげの情報を聞き出そうとかなんとかして、たまたまそういう流れになっただけなんだろう。正義感とか、そんなんじゃ全くなく。 「……随分遠くまで行っちゃったのね」 「―――遠いの?その島って」 「うん、メリー号だったら、順調にいっても2、3週間はかかるかな」 「―――そう」 「うん、クリスマスやニューイヤーには、ちょっと来れない距離だったわね」 柔らかく笑って慰めのような言葉をくれる。 (さすがナミさん、鋭いなあ…) 表に出しているつもりは無かったのだけれど、きっと聡い彼女にはバレてしまっていたんだろう。 イベント好きなのかどうかは知らないが、エースは意外に記念日を大事にする。これまでも、サンジの誕生日だったりバレンタインだったりに、いきなりヒョッコリと現れたりした。 そんなんだから、クリスマスやニューイヤーにも、サンジはちょっぴり期待してしまっていたのだ。 だけど、結局彼は来なかった。それもそのはず、そんな遠いところにいたんじゃ、来れるはずが無い。 当たり前の恋人同士ではないのだから、自分たちはそうそう二人でイベント事を祝えたりするわけじゃない。 そんなことわかっているけど―――。
最近ちょっと疲れ気味。
自分は元々待つのは苦手なのだ。 好きだと言ってくれたその気持ちを疑うわけじゃない。だけど、昨日はそうでも、今日はどうなっているかなんてわからない。 自分たちが会えるのは、良くて年に数回。そんな状況で相手の気持ちを信じつづけることなんて難しい。 エースを忘れることなんて、とても出来そうにないけど、時々苦しくていっそ逃げ出したくなってしまう事がある。
皆が寝静まった後も、サンジはなかなか寝付けずに、甲板に出て一服付ける。 月が明るい夜。澄んだ冷たい夜の空気が、重く沈んだ心を少し浮上させてくれる。
ぼんやりとしていたら、人の気配を感じて慌てて暗闇に目を凝らす。手すりの上にひらりと人影が現れたのを見て、サンジは緊張しながら身構えた。 「サンジ!」 「―――エース?」 闇に溶け込むような黒いコート姿で手すりに立っているのは、今し方までのサンジの物思いの相手、エースその人だった。 「よっ、元気?」 タン、とサンジの目の前に着地して、屈託なく笑う。思わずポカンと開きっぱなしだった口から、銜えていたタバコがポロリと落ちた。 「なんでそんな幽霊見るみたいな顔すんの?」 そんなサンジの顔を、エースは首を傾げて覗き込む。 「あ…だって、○○島にいたって…新聞に」 「ああ、おとといまでね。無駄足だったんだけどさ……それより―――」 フッと苦笑して、エースが手の平でサンジの頬にそっと触れた。冷えた頬にじんわりと彼の熱が伝わる。 「そんな泣きそうな顔しないで」 「え?」 エースの言葉に驚いて思わず呟いたサンジの声は、ほんの一音なのに、それでもえらく掠れて聞こえた。 「ゴメンね、不安にさせた?」 そんな事ないと言いたかったけれど、喉が詰まって言葉が出ない。ただ下を向いてフルフルと首を降る。その拍子に我慢していた涙がこぼれて、明るすぎる月の光を反射して落ちた。 会えない日々がどんなに苦しくても、こうして目の前にエースがいるだけで、心が、身体が、震えるくらいに歓喜する。逃げ出したいなんて、一瞬でも思えた事が不思議なくらいだ。どうしたって諦められるはずがないのに。 「ごめん、泣かないで、サンジ」 ぎゅっと抱き締められる。そんなことをされたら余計に涙が止まらなくなるのに。 泣いてしまったのは、安心したからだ。ずっと我慢していたものが、エースの顔を見たら緩んでしまった。 サンジは甘えた気持ちで、エースのコートの肩口に額を擦り付ける。 「サンジ…ねえ、サンジ」 「…ん?」 髪の毛にキスを落としながら、エースが柔らかい声で囁く。サンジは久しぶりのエースの匂いにうっとりしながら、どこか上の空にも聞こえる返事を返す。 「サンジ、俺のお願い聞いてくれる?」 「うん…なに?」 「寂しい思いばっかさせてる。違う船に乗ってる以上、もしかしたらこの先君を悲しませるような状況になるかもしれない。だから、君が誰か、もっと側にいてくれる人の方がいいっていうなら仕方ないけど―――」 「そんなことあるわけねぇじゃん!」 サンジは驚いて、身体を離してエースの顔を見上げる。 嬉しそうに笑ったエースが、ちゅ、とサンジの額にキスを落とす。 「もし、俺の事を好きでいてくれるなら、何があっても絶対に俺の事、諦めないで」 「エース…」 「君が俺の事を想ってくれている限り、俺はどんな事でもできるから。想いあっていれば、絶対に二人で幸せになれるから」 「うん…うん!」 エースの瞳に宿る光はとても強くて、彼の目を見ていたら、自分達は絶対に大丈夫だって信じられる。 サンジはぎゅうっとエースの首にしがみついた。 エースが言うんだから間違い無い。俺達の未来は絶対に幸せな未来だ!
「そう言えばエース、どうやってここまで来たんだ?」 「どうやってって…船で来たよ、そりゃ」 「だってナミさんが二週間はかかるって…」 「2日間寝ないで飛ばしてきました」 「それにしたって…」 「ワタクシ、時速約200キロで移動してますから」 「…人間じゃない…」 「俺、能力者だもん」 そう言って、くあぁ、と大口を開けてあくびをしたエースは、「ちょっと寝かせて」と言ったと思ったら、次の瞬間にはサンジの肩にもたれて眠っていた。 「ちょっ…重っっ…!」 ずっしりとのしかかって来るエースを抱えてヨロヨロと座り込む。エースの身体は暖かくて、今夜はこのまま寝ちゃってもいいか、などと幸せに弛んだ頭で思いつつ、サンジは目を閉じた。
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