エンターテイメント日誌

2006年08月07日(月) 蒼井優、奇跡の輝き

蒼井優という女優を恐らく初めて遭遇したのは「リリィ・シュシュの全て」(2001)の筈だ。なんでそのような曖昧な書き方をするかというと、その映画で彼女がどの役を演じていたのか全く記憶に残っていないからだ。彼女が未だ15歳くらいの頃である。

蒼井優の存在を意識したのが塩田明彦の傑作「害虫」(2002)。宮崎あおいの同級生役だったが、その時の印象もちょっと可愛い優等生くらいの認識でしかなかった。

彼女の魅力が大きく花開き、あまりの変貌に腰を抜かしたのが岩井俊二の「花とアリス」(2004)。特に最後のバレエ・シーンの彼女は神々しいまでにオーラを放ち、筆者はただスクリーンの前に呆然と佇むばかりだった。

「亀は意外と速く泳ぐ」(2005)では一変し、驚くほど派手な衣装で登場。自由奔放な女の子を実に魅力的に演じ、主役である筈の上野樹里を完全に喰ってしまっていた。

さて2006年の新作、ハチクロこと「ハチミツとクローバー」である。兎に角この映画は蒼井優、彼女に尽きる。彼女を鑑賞するためだけに存在する映画と断定しても決して過言ではない。今回彼女が演じるのは<はぐ>こと花本はぐみ。開口一番その幼く頼りない発声法に愕然とした。いままでの蒼井優のイメージと全然違う!まるで原作漫画から抜け出たような儚げな<はぐ>がそこにいた。な、何なんだこの七変化は!?蒼井優、もしかしたら君はカメレオン・ガールなのか?・・・まぁ冗談はさておき、今回も彼女に心底参った。弱冠20歳(撮影当時)にして不思議な魅力を放散する女優である。

彼女の輝きにもかかわらず、映画自体の評価はC-である。加瀬亮や、美大の先生を飄々と演じた堺雅人はとても良かったのだが、全てをぶち壊したのが大根役者・櫻井翔である。ジャニーズだから客を呼べるのかもしれないが、こんな演技のいろはも出来ない奴に主役をさせるな!

あとこの作品のコンセプト、登場人物の誰もが片思いという設定が、あざといというかリアリティに欠けて詰まらなかった。振り向いてもくれない相手を想い続けたってしょうがないじゃないか。いい加減あきらめて他を探せよな。ウジウジと悩み続ける美大生たちに最後はだんだんイライラしてきた。美大生の生活感は上手に醸し出されていただけに勿体ない。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]