エンターテイメント日誌

2006年01月15日(日) 三谷の法則 <THE 有頂天ホテル>

「THE 有頂天ホテル」の前に三谷幸喜が監督・脚本を担当した、あるいは脚本のみ書いた映画を2つに分類すると以下のようになる。

<傑作>「十二人の優しい日本人」「ラヂオの時間」
<失敗作>「みんなのいえ」「竜馬の妻とその夫と愛人」「笑の大学」

ちなみに筆者は舞台版の「十二人の優しい日本人」「竜馬の妻とその夫と愛人」「笑の大学」を観ているが、舞台については全て文句なしの傑作である。特に「笑の大学」については三谷幸喜の舞台における代表作ではないかとさえ考えている。

では映画に関して傑作と失敗作を分けている要素は何かと考えれば、それはズバリ登場人物の数である。ふたり芝居の「笑の大学」とか、登場人物が4人しかいない「竜馬の妻とその夫と愛人」などは舞台では良くても映画では間がもたないのだ。つまり三谷作品の映画が面白くなるためには台詞のある役が12人以上の群像劇であるということが必須条件なのである。

そこで「THE 有頂天ホテル」だが、このグランド・ホテル形式の作品は見事にこの条件を満たしている。成果は言わずもがな。三谷映画の最高傑作となった。評価はAである。

三谷作品は従来、テレビでも映画でも非常に舞台的な空間を醸し出していた。場面転換が少なく、限定された室内で物語が進行することが多かった。「王様のレストラン」しかり、「今夜、宇宙の片隅で」しかり。

しかし、2006年になって三夜連続で放送された「古畑任三郎」ファイナル・シリーズや「新選組!!土方歳三最後の一日」を観て感じたのだが、三谷幸喜は明らかに進化した。場面転換が速くなり、躍動感を増したのである。つまり非常に映像的になったのだ。そのことは「THE 有頂天ホテル」でも端的に表れている。沢山の登場人物が画面狭しと入り乱れ、様々な人生が交差する。キャメラが彼らを追って動く、動く!これぞ正に映画である。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]