エンターテイメント日誌

2004年11月13日(土) コイツは韓流キューブリックか!? <オールド・ボーイ>

「ヘルボーイ」「ディープ・ブルー」「砂と霧の家」など、既に観ているのにレビューを溜めているのが沢山ある。しかし何はさておき「オールド・ボーイ」だ。

「オールド・ボーイ」は今年カンヌでグランプリに輝いたが、筆者は最高賞であるパルムドールこそ、この映画に相応しいと確信する。筆者の評価はAAである。

韓国映画史に燦然と輝く「殺人の追憶」を撮った天才ポン・ジュノ監督のことを筆者は<韓国の黒澤明>と喩えたが、それならばさしずめ「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督は<韓国のスタンリー・キューブリック>と呼ぶのが相当だろう。バイオレンスが炸裂するという意味では北野武や今年カンヌの審査委員長だったクエンティン・タランティーノの映画を思い起こすが、「オールド・ボーイ」はもっと奥が深い。敢えて一番似ている過去の作品を挙げるなら「時計仕掛けのオレンジ」だろう。決して好きな物語ではないのだが、まるで三島由紀夫の文学を読んだ時のように、その圧倒的な表現力・完璧な美の構築の前に呆然と立ちすくみ、無言でひれ伏すしかないという印象なのである。この作品を一言で表現するなら<とんがった映画>、これに尽きるだろう。正統派の「殺人の追憶」に対して本作は異端の傑作である。

実はパク・チャヌクの「JSA」は映画館で観ているのだが、正直大した作品だとは想わなかった。だから観る前は「オールド・ボーイ」も舐めていた。真に申し訳ない、ここに陳謝する次第である。

それにしても天才ポン・ジュノがいて、さらに奇才パク・チャヌクが出現するというのは今の韓国映画界は何と豊饒なのだろう。韓流、恐るべし。ハリウッドを別格として今世界で最も映画に活気があって最先端を突っ走っているのは韓国以外にあるまい。ヌーベルバーグ華やかなりしころのフランスを凌駕する勢いだ。

しかしこれだけ凄い作品が目尻押しなのに、次回のアカデミー外国映画賞の韓国代表が「プライベート・ライアン」のパクリでしかない駄作「ブラザーフッド」とは何事か!?韓国の選考委員は火焙りの刑に処すべきである。

「オールド・ボーイ」唯一の弱点は監禁した動機の真相が弱いことだろう。これは少々納得出来ない。ただこの動機は原作漫画と異なり映画オリジナルだそうだから致し方ないのかも知れない。しかし、その弱点を補って余りある映画の文体の素晴らしさには舌を巻く。こんな凄い映画観たことない!目を瞠る構図、流麗なカメラワーク。特に主人公デス(チェ・ミンシク)が18名の屈強なボディガード相手にひとり大立ち回りを演じる場面はカメラが横移動して2分40秒をワンカットで一気に観せる演出で、これには舌を巻いた。肌がヒリヒリ痛むような衝撃的真相が語られた後に、突如として雪のニュージーランドに舞台転換する意外性も圧巻だった。哀しくも、限りなく美しい幕切れであった。

それから韓国映画で一番立ち後れているのは音楽なのだが、この映画の音楽はとても印象的だった。特に哀切なあのワルツ!公式サイト(←クリック)で聴いてくれ。

チェ・ミンシクの演技はもう言うまでもなく文句なしなのだが、寂しさを湛えた瞳を持つヒロイン;ミドを演じたカン・ヘジョンの存在感も特筆に値する。またその脱ぎっぷりも潔い。観ていて爽やかだ。それに比べると映画の題材から言えば必然性があり、ヌードになることは絶対不可欠な筈なのに脱がなかった「海猫」の伊藤美咲と「血と骨」の鈴木京香は万死に値する不届き者である。女優の風上にも置けない。しかしそれはまた、別の話。

「オールド・ボーイ」を未見の者は直ちに映画館に駆けつけろ。興味のない奴、暴力描写の苦手な奴は・・・勝手にしやがれ!!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]