エンターテイメント日誌

2004年07月24日(土) 巨星、墜つ!〜追悼:巨匠ジェリー・ゴールドスミス

7月21日に映画音楽の巨匠、ジェリー・ゴールドスミスが逝去した。享年75歳。つい先日「世界の中心で、愛をさけぶ」で素晴らしい仕事をし、映画屋としての気骨を世に知らしめた撮影監督、篠田昇が亡くなったのも哀悼に堪えないが、ジェリーの死はそれを上回る衝撃であった。

本人の意志とは無関係にジェリーは常にジョン・ウイリアムズのライバルと目されてきた。フル・オーケストラを駆使した華麗なサウンド、ジョンが「スター・ウォーズ」や「スーパーマン」などのSFを手がければ、ジェリーは「エイリアン」「スター・トレック」「スーパーガール」で対抗するといった具合だ。しかし残念なことにジョンがA級の大作の音楽を担当することが多かったのに対し、ジェリーはB級、C級の低予算作品が多かったということも動かしがたい事実である。だからジョンがオスカーを5回受賞したのに対し、ジェリーが栄冠に輝いたは「オーメン」のただ一度限りだった。これはいくらなんでも過小評価と言わざるを得まい。しかし、ジェリーはどんなに下らない映画でも決して手を抜くことはなく、その音楽は常に一級品であった。以下筆者の考えるジェリー・ゴールドスミス・ベスト10を語ろう。
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「カプリコン・1」
これは文句なしに彼の最高傑作。打楽器を駆使し、激しく打ち鳴らすド派手なサウンドで、これを聴いて燃えずにはいられようか!中学生の時、所属していたブラスバンド部で「是非この曲を演奏しようよ。」と提案し、メンバーたちから冷たい視線を浴びたのも、今は懐かしい想い出だ。映画自体もピーター・ハイアムズ監督の最高傑作ではなかろうか?隠れた名作である。ちなみにジェリーが「トータル・リコール」に書いた音楽は「カプリコン・1」に非常によく似ている。

「スター・トレック」
恐らく筆者がジェリーの名前を覚えた、最初の音楽ではなかろうか?「スター・ウォーズ」の大ヒットを受けて映画が公開された当時、FMで放送されたのをエア・チェックした。小学生の頃の話である。テーマ曲が最高に格好良い。

「オーメン」
やっぱりこれは外せないだろう。悪魔的な合唱曲“アヴェ・サンターニ”の衝撃は忘れがたい。

「猿の惑星」
ジェリー究極の前衛音楽。あ、ティム・バートン監督のリメイク版じゃないよ。あちらの音楽はダニー・エルフマン。ジェリーのはフランクリン・J・シャフナー監督のオリジナル版の方である。

「海流の中の島々」
知られざる名曲と言うことで。ちなみにこのサントラは所有してるのだけれど、映画の方は残念ながら未見。映画監督のフランクリン・J・シャフナーとジェリーの蜜月はスティーブン・スピルバーグとジョン・ウイリアムズのそれに匹敵するものであると言えるだろう。「パピヨン」のあの、アコーディオンの哀切極まりない旋律も忘れがたい。

「チャイナタウン」
フィルム・ノワールの音楽といえばこれにとどめを刺す。トランペットの哀しい響きが胸に静かに響き渡る。同じくジェリーが担当した「LAコンフィデンシャル」も似たタイプの映画だった。これぞハードボイルドだど!(by 内藤陳)

「風とライオン」
嗚呼、燃える!痺れる〜ぅ!これはジェリー版「アラビアのロレンス」である。しかしこの映画の監督、ジョン・ミリアスは近頃どうしているのだろう?

「いつか見た青い空」
原題はa PATCH OF BLUE。盲目の少女と黒人青年の恋の物語。1965年に製作されたちいさな小さな映画。ジェリー初期の代表作である。口笛で吹かれる「虹の彼方に」の後に奏でられるピアノを主体とした小編成オーケストラによるテーマ曲。静かに湖の水面を撫でる微風のように涼やかで、そしてちょっぴり寂しい旋律。何とも胸に滲みる名曲である。

「ルディ/涙のウイニング・ラン」
人知れず公開された映画で、筆者も未見なのだが音楽は余りにも有名。今でもしばしばテレビのスポーツ番組などで使用されているのを耳にする。

「トゥルーナイト」
アーサー王と円卓の騎士の物語。筆者は映画を未見。でも音楽は最高に高貴で限りなく美しい。あまりに惚れたのでその音楽を自分の結婚式で使用したくらいである。

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「ブルーマックス」「ライオンハート」「アンダー・ファイア」「エイリアン」「ポルターガイスト」「氷の微笑」「ムーラン」などまだまだ語りたいジェリーの音楽は尽きないけれど、今日はこれくらいに止めておこう。

オーケストラを使用した劇判系のフィルム・ミュージックのファンは大雑把に言えばジョン・ウイリアムズ派とジェリー・ゴールドスミス派に分けられる。僕はどちらかといえばジョン派であるが、こうして振り返ってみればジェリーの音楽にも大いにその感性を磨かれて来たことが良く分かる。ジェリー、僕は貴方の音楽を道標として生きてきたと言っても過言ではありません。ありがとう、そして安らかにお眠り下さい。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]