エンターテイメント日誌

2004年03月14日(日) <イノセンス>あるいは鈴木プロデューサーのしたたかさ(前編)

押井守脚本・監督のアニメーション「イノセンス」の評価が真っ二つだ。しかしそれをよく見るとある種の特徴が刻印されていることに気付く。「イノセンス」はれっきとした「攻殻機動隊」の続編なのだが予め前作を観て、その作品世界を理解した上で本作に臨んでいる人々はおしなべて絶賛しており、前作はおろか一本も押井作品を観たことがなく、全く予備知識なして臨んだ人は「訳が分からない」「退屈で最後まで観るのが苦痛だった」といった、否定的意見に傾いているという図式が鮮明に浮かび上がってくる。僕は直前に「攻殻機動隊」のDVDをレンタルして2回観て予習したので無論「イノセンス」を手放しで褒め称える側にいる。評価は文句なしにAだ。

ミステリ小説「ハサミ男」などを書いた殊能将之は自身のホームページの日記の中で

いやー、すごいねえ。天下獲れる映画。(中略)ちゃんとスリラーとして成立している点もよろしい。

と「イノセンス」の感想を書いているが、正に至言である。本作はドリームワークスの配給で今年の全米公開が既に決まっているが、ディズニーやピクサー、ドリームワークスのラインアップを見る限りアカデミー賞長編アニメーション部門については向かうところ敵なしといったところだろう。「イノセンス」受賞を阻止するとしたら「ハウルの動く城」か「スチームボーイ」を今年中に全米公開する以外に手がない。カンヌからも招集が掛かっているという噂も聞くが、いやはやカンヌに出品すればパルムドール(あるいはグランプリ)も夢ではないだろう。だって今年のカンヌの審査委員長はクエンティン・タランティーノ。タランティーノは「攻殻機動隊」の大ファンで「キル・ビル」のアニメーション・パートをわざわざプロダクション I.G(イノセンスの制作会社)に頼んだくらいの間柄なのだから。

だから「イノセンス」をこれから観ようという人は「攻殻機動隊」で予習をしておくことが必須である。特に少佐=草薙素子(くさなぎ もとこ)とはどのような存在で、バトーとの関係はどうなのかという点を押さえておかないと、「イノセンス」の物語展開がちんぷんかんぷんになってしまうだろう。時間がない人はせめてここの基本用語集を見ておこう。

長くなりそうなので今日はここまで。次回へ続く。読みたかったらエンピツの投票も宜しく。


 < 過去の日誌  総目次  未来 >


↑エンピツ投票ボタン
押せばコメントの続きが読めます

My追加
雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]