エンターテイメント日誌

2004年02月01日(日) アメリカの夢とシービスケット

映画「シービスケット」はアカデミー賞で作品賞、脚色賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、編集賞、音響編集賞の計7部門にノミネートされた。「LOTR 王の帰還」という強敵があるだけに各部門での受賞は困難だが、僕としては撮影賞を応援したい!特に競馬レース中の疾走感、高揚感は素晴らしい出来映えであった。また、あたかも音楽のような切れ味の良い編集も特筆に価する。

僕の評価は文句なしにAを進呈しよう。この作品を観て一番強く感じたのは「嗚呼、ハリウッドらしい映画だなぁ。」ということ。小さな競走馬に夢を託す男たちの物語。たとえどんなに挫折感を味わおうとも、諦めないで信じていればいつか夢は叶う。これはそんなアメリカの夢、実話に基づく現代の寓話である。どんなに貧乏でも、才能があってチャンスさえ掴めば誰もが大金持ちになれたり、あるいはヒーローになれる。アメリカ合衆国とはそういう可能性の王国なのだというオプティミスティックな説得力、力強さがこの作品にはある。それが現実との齟齬がないかどうかは別にして、少なくとも僕は暗澹たる宿命を観客に提示して、虚無的な気分に落ち込ませる「ミスティック・リバー」のような映画よりは遙かに「シービスケット」の方が好きだし、断固支持する。<映画とは命に限りのあるものが、永遠の生命を有するものに、そのひとの想いを託す行為である。>…大林宣彦監督の言葉である。

上映時間は141分。その長さを一切感じさせなかった。脚本・監督のゲイリー・ロスの作品は以前「カラー・オブ・ハート」を観ているが、あちらは「シービスケット」よりも短いにもかかわらず、間延びして退屈な印象を受けた。「カラー・オブ・ハート」にもトビー・マグワイアは出ていたが「シービスケット」の方が断然魅力的。それからトビーのライバルを演じるゲイリー・スティーヴンスは現役の名ジョッキーだそうだがこれには驚かされた。正にはまり役。いい味出してるんだなぁ、彼が。それから調教師役のクリス・クーパー、彼がオスカーの助演男優賞を受賞した「アダプテーション」の演技よりも僕はこっちの方が好きだなぁ。渋い!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]