エンターテイメント日誌

2003年11月07日(金) ビルを殺れ!

クエンティン・タランティーノの新作「ビルを殺れ!」のポスターといえばこれ(←クリック!)でしょう。70年代テイストがあって、なんとも愉しい。凄く凝ってるし、これを製作した映画秘宝のスタッフは洒落の分かる人達だなぁ。

実は今までタランティーノの映画は好きではなかった。暴力描写のえげつない「レザボアドッグス」にはカタルシスを一切感じなかったし、車内でピストルが暴発して脳みそをぶっ飛ばし、それを掃除するという行為で笑いをとろうとする「パルプ・フィクション」は品がなくて悪趣味と想っただけ。両者は僕にとっては全く詰まらない代物であった。

「ビルを殺れ!」の予告篇を観た時は、何だかとてつもないバカ映画が出現したという印象で、もしかしたら来年のラジー賞を総嘗めと大評判のベンアフ&ジェニロペの「ジッリGigli」と競い合うようなトンデモな仕上がりではないかと変な期待をしてしまったりもした。それから上映時間が3時間半にも及び、結局ミラマックスがVol.1と2に分けて公開すると決定したニュースを聞いて「ミラマックスも焼きが回ったねぇ。Vol.1がコケたらVol.2の公開自体も危ういんじゃないの?」という危惧を抱いたのだが、それは単なる杞憂に過ぎなかったようだ。

蓋を開けてみると評論家にも観客にもバカ受け。全米及び日本でオープニングの興業成績もNO.1に輝いた。実際観た今となってはタラちゃんに脱帽だ。復讐に燃えるヒロインという設定以外何もない、このくだらないB級映画を徹頭徹尾愉しんで観させてもらった。70年代の香港や日本映画たちへの愛が全編に満ちあふれ、タラちゃんお得意の残酷描写もあっけらかんとしていてカットも短いのでかえって笑えてくる。頭も腕もビュンビュン飛ぶぞ。

“GOGO夕張”を演じた栗山千明が最高にキュート!世界的に大ブレイクしそうな予感。ルーシー・リュー演じる姐さんも和服がびしっと決まって格好良い。Vol.2が待ち遠しい。嗚呼、でもこのふたりはもう出番がないんだよね...ちょっぴり淋しい。

ルーシー姐さんの少女時代を描くアニメは日本のプロダクションが製作、アニメーション監督は中澤一登さんが担当した。まるで「巨人の星」か「ゴルゴ13」といった劇画タッチの仕上がりで、これも可笑しかった。本作といい「アニマトリックス」といい、ジャパニメーションの世界進出には目を瞠るものがある。それにしてもこんな無茶苦茶でしょーもない脚本に、ミラマックスはよくゴーサインを出したもんだ。タラちゃんに最終編集権を与える契約をしたというのも、清水の舞台から飛び降りるような心境だったろう。製作者の無謀な英断に拍手。

百聞は一見に如かず。未見の方は是非、映画館へGO!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]