エンターテイメント日誌

2003年09月07日(日) GET UP !

井筒和幸監督の映画で僕が今まで観た作品は

「晴れ、ときどき殺人」
「マル金(キン)マル貧(ビ)の金魂巻」
「二代目はクリスチャン」
「犬死にせしもの 」(当時まだ無名だった今井美樹が娼婦役で登場し、オール・ヌードを披露して話題に)

としょ〜もない駄作ばかりで、実は監督の代表作と言われる

「ガキ帝国(1981) 」 (主演は島田紳助・松本竜介 )
「岸和田少年愚連隊(1996)」 (主演はナイナイ)
「のど自慢(1999)」

を何故か観ていない。ちなみにこの三作はいずれもキネマ旬報ベストテンに入選している。

だから井筒さんは笑えない喜劇<もどき>を撮る才能のない監督で井筒映画は登場人物が全員躁状態で怒鳴りまくり、全然台詞が聞き取れない暴力的で下品なクズ映画だと信じて今まで生きてきた。

さらに「東方見聞録」事件が監督のイメージを悪化させていた。その事件とは…

平成3年9月21日、静岡県駿東郡小山町上野の奥の沢川で劇場用映画「東方見聞録」(ディレクターズカンパニー製作。井筒和幸監督、緒方直人主演)のロケに来ていた俳優・林健太郎が川の深みにはまって溺れ病院に運ばれたが意識不明の重体。後に死亡。同県御殿場署の調べによると武者が滝つぼに落ちるシーンの撮影のため鎧をつけた同俳優が滝つぼに入ったところ、突然流されたらしい。
この記事の参考文献はこちら

そして翌年この事故の管理責任を問われ、井筒和幸監督と小笠原直樹助監督は書類送検されたのである。 この件に関しては井筒監督に弁解の余地はないだろう。杜撰な安全管理体制のせいで死者を出したのだから。ものを創るということの恐ろしさを知らぬ傲慢な男。こうして井筒という人の人間性への不信から、この事件以降僕は彼の映画から遠ざかっていた。

これは最近になって知ったのだが、「東方見聞録」事件の後、製作会社ディレクターズカンパニーは倒産。結局遺族に関する補償は全面的に監督が負担することになったそうだ。そしてその補償金を支払う為に、手っ取り早く稼げる手段として井筒監督はテレビに頻繁に出演するようになり、辛口トークで人気を博し、また一方で反感を買い、少なからぬ敵をつくったのである(参考記事はこちら)。

さて評判の「ゲロッパ!」である。これはもう素直に面白かった。劇中何回もゲラゲラ笑かして貰った。ファンキーで、それでいてホロリと泣かせる場面もあり、喜劇映画として出色の出来。また、日本映画には少ないセミ・ミュージカル仕立てというのも気に入った。踊りまくる西田敏行と岸部一徳が最高!藤山直美まで踊るのにはもう吃驚。また、「ガキ帝国」以降友好関係にある吉本興業の協力がこの映画をさらに豊かにしているという印象を受けた。ただしナイナイの岡村が演じたキャラクターは意味不明。

過去自分が引き起こした災厄の贖罪を果たしつつ、それでも人間喜劇を捨てなかった井筒監督は今回、本当に良い作品を撮ったと想う。必見。

余談だが、常盤貴子の娘を演じた太田琴音ちゃんがおしゃまで、とても可愛かった。この子の天才子役ぶりは「ペーパームーン」のテイタム・オニール(アカデミー助演女優賞受賞。撮影当時9歳)や「グッバイ・ガール」のクイン・カミングス(アカデミー賞ノミネート。当時10歳)に匹敵する20年にひとりの逸材と断言しても言い過ぎではないだろう。


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