エンターテイメント日誌

2003年03月22日(土) オスカー直前大予想大会!

さて、いよいよ第75回米アカデミー賞授賞式が近づいてきた。恒例の僕の今年の予想をご披露しよう。ちなみに昨年の成績は本命のみの的中は10部門、対抗馬を含めると18部門だった。

ウェブ上で映画について語るライター達に告ぐ。アカデミー賞の結果が出た後になって「予想通り」とか「やっぱり」などと知った風な口を叩かないでもらいたい。自分は最初から分かっていたと自慢したいのなら事前にその予想を世間に公表すべきである。そうでなければ貴方は単に知ったかぶりの卑怯者に過ぎない。
              
作品賞
 本命:シカゴ 対抗:めぐりあう時間たち
監督賞
 本命:シカゴ 対抗:ギャング・オブ・ニューヨーク
主演女優賞
 本命:レニー・ゼルウィガー (シカゴ)
 対抗:ニコール・キッドマン(めぐりあう時間たち)
主演男優賞: 
 本命:ダニエル・デイ=ルイス(ギャング・オブ・ニューヨーク)
 対抗:ジャック・ニコルソン(About Schmidt)
助演女優賞
 本命:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(シカゴ)
 対抗:ジュリアン・ムーア (めぐりあう時間たち)
助演男優賞
 本命:クリストファー・ウォーケン
 (キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)
 対抗:クリス・クーパー(Adaptation)
脚本賞
 本命 :Talk To Her 対抗:エデンより彼方に
脚色賞
 本命:めぐりあう時間たち 対抗:Adaptation
撮影賞
 本命:ロード・トゥー・パーディション 対抗:エデンより彼方に
編集賞
 本命:シカゴ 対抗:ギャング・オブ・ニューヨーク
美術賞
 本命:LOTR 2つの塔 対抗:ギャング・オブ・ニューヨーク
衣装デザイン賞
 本命:シカゴ  対抗:Frida
音響賞
 本命 :ロード・トゥー・パーディション 対抗:シカゴ
音響編集賞
 本命:LOTR 2つの塔 対抗:ロード・トゥー・パーディション
メイクアップ賞
 本命:Frida 対抗:なし
特殊効果賞
 本命:LOTR 2つの塔 対抗 :スター・ウォーズ エピソード2
長編アニメーション賞
 本命:千と千尋の神隠し 対抗:リロ&スティッチ
短編アニメーション賞
 本命:The ChubbChubbs 対抗:Mike's New Car 
長編ドキュメンタリー賞
 本命:ボーリング・フォー・コロンバイン 
 対抗:Prisoner of Paradise
短編ドキュメンタリー賞
 本命:Twin Towers 対抗:不明
短編実写フィルム賞
 本命:Inja (Dog)  対抗:不明
作曲賞   
 本命:めぐりあう時間たち 対抗:Frida
歌曲賞
 本命:シカゴ 対抗:ギャング・オブ・ニューヨーク
外国語映画賞
 本命:Nowhere In Africa(ドイツ) 対抗:英雄/HERO(中国)

結局それぞれの授賞数は「シカゴ」7±1 「めぐりあう時間たち」3±1 「ギャング・オブ・ニューヨーク」2±1 「ロード・トゥー・パーディション」2±1 「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」2±1 「戦場のピアニスト」0(+1)と予想する。

7部門ノミネートされた「戦場のピアニスト」は恐らく全滅、仮に授賞出来たとしてもせいぜい主演男優賞止まりだろう。アカデミー会員は非常に保守的でモラルを重んじる。だから少女レイプ事件で国外逃亡中のポランスキーに賞を与える筈がないと確信する。また、アカデミー会員はカンヌ映画祭に対する対抗心が非常に強く、過去を振り返ってもカンヌでパルム・ドールに輝いた映画がアカデミー賞で主要部門を授賞したという例が極めて少ないこともこの僕の予想を裏打ちする。過去パルム・ドールに輝いたハリウッド映画では「オール・ザット・ジャズ」だって、「地獄の黙示録」だって、スコセッシの「タクシー・ドライバー」だってオスカーでは涙をのんだのである。

今回の予想で一番悩んだのが監督賞と主演女優賞。監督賞は純粋に作品の出来だけ考えれば「シカゴ」のロブ・マーシャルが順当なのだが、実力だけで決まらないのがオスカーの面白いところ。たとえばそれまで無冠だったポール・ニューマンが「ハスラー2」などという駄作で、功労賞的な意味で授賞したりすることがある。となると今回その功労賞に値するのが「ギャング・オブ・ニューヨーク」のマーティン・スコセッシ。「レイジング・ブル」とか「タクシー・ドライバー」など映画史に燦然と輝く名作を沢山撮りながら何故かアカデミー賞では無冠。スコセッシは映画フィルムの保存を訴える活動も長年地道に続けており、非常にアカデミーへの貢献も大きい。もし今回獲れなければ二度とチャンスがないかも知れない。だからたとえ「ギャング・オブ・ニューヨーク」程度の出来の悪い作品であろうと、スコセッシに同情票が集まる可能性は極めて高いのだ。ちなみにポール・ニューマンがお情けでオスカーを貰った「ハスラー2」はスコセッシが監督だった。

主演女優賞は、これっはもうレニー・ゼルウィガーとニコール・キッドマンが互角の勝負。キッドマンは特に昨年、最有力候補だった「ムーラン・ルージュ」で涙をのみ、その点でも同情票が集まる可能性が高い。ジュリア・ロバーツも授賞したんだし、次にオスカーを与えるべきスター女優といえばキッドマンを措いて他にないという意識も会員にあるだろう。ミュージカルやコメディよりもシリアスものの方が圧倒的に有利という<オスカーの鉄則>も無視出来ない。

ミラマックスという映画会社は非常にアカデミー賞の前哨戦の宣伝戦略に長けており、「プライベート・ライアン」が最有力と言われた年に「恋に落ちたシェイクスピア」が作品賞を獲れたのはミラマックスのキャンペーン工作のおかげと言われている。しかしながら今年ミラマックスの作品で候補になっているのは「シカゴ」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「めぐりあう時間たち」と3作品もあるのだ(笑)。ミラマックスとしてもどの作品に力を入れたら良いのか頭の痛いところだろう。で僕の知りうる限りの情報ではミラマックスが今回、何が何でも獲らせたいと力を入れているのが「シカゴ」で助演女優賞候補になったキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。しかし主演女優賞の方は「シカゴ」のゼルウィガーではなく、ニコール・キッドマンの方に肩入れしているらしい。そして会社の気持ちとしては「シカゴ」や「めぐりあう時間たち」よりも、社運を賭けて莫大な製作費をつぎ込んだ「ギャング・オブ・ニューヨーク」に沢山賞を獲らせたいというのが本音だろう。だからほぼ確実なダニエル・デイ=ルイスの主演男優賞に加え、作品賞はまず無理だからスコセッシに監督賞を獲らせようと必死になつて裏工作を行っ
ている筈。さて、そのキャンペーン活動が吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知る。

キャンペーンといえばもう絶対確実と考えられていた長編アニメーション部門での「千と千尋の神隠し」が授賞出来るかどうか、にわかに雲行きが怪しくなってきた。というのは配給をしたディズニーが「千と千尋の神隠し」の宣伝を全く行わず、自社製作の「リロ&スティッチ」を何とか獲らせようと威信を懸けて莫大な資金を投じて大キャンペーンを展開しているそうだ。昨年のアニメーション部門でドリームワークスの「シュレック」に敗れたのがよほど腹に据えかねたのだろう。僕は作品の力だけで「千と千尋の神隠し」が授賞出来ると今でも信じているが、もし万が一「リロ&スティッチ」が授賞するようなとんでもない事態になったら、それは如何に現在のアカデミー賞が金の力次第でどうにでもなり、腐り切っているかの証明ともなるだろう。そうならないよう、今はただ祈るだけだ。

ドキュメンタリー映画部門では「ボーリング・フォー・コロンバイン」が最有力であることには間違いなのだが、このご時世、果たして保守的なアカデミー会員がアメリカの銃社会を笑い飛ばす、この反体制的な映画に本当に投票するのか大いに興味のあるところだ。もしも授賞出来たらアカデミー会員の勇気ある行動も賞賛したいと想う。それにしてもブッシュ大統領を散々コケにした本「アホでマヌケなアメリカ白人」の著者でもあるマイケル・ムーア監督がどのようなスピーチをするのか、それもとても愉しみ。

歌曲賞は大いに迷った。最初はU2が唄った「ギャング・オブ・ニューヨーク」の主題歌で決まりだと想っていのだが、映画「シカゴ」のサントラ盤を聴いているうちに、これもありかな!?という気になってきた。今回の映画のために書かれた新曲"I MOVE ON"という曲は実を言うと他のナンバーと比較して傑出しているとは決して想わないのだが、歌曲賞の過去の歴史を振り返ると「エビータ」の新曲でロイド=ウェバーが授賞したり「ディック・トレイシー」でミュージカルの大御所スティーブン・ソンドハイムが授賞したりとなかなか<通好み>の選択がされることもあるので、ここは大胆に「シカゴ」で勝負に出ることにした。授賞式当日はゼルウィガーとゼタ=ジョーンズのパフォーマンスがライブで観れる筈。これは大いに愉しみである。授賞式会場も盛り上がるだろう。

「シカゴ」が作品賞を授賞出来れば、ミュージカル映画が授賞するのは「オリバー!」以来実に34年ぶりの快挙になる。沈滞し今では殆ど製作されなくなっていたミュージカル映画の復権が何よりも嬉しい。これを切っ掛けに今後、「レント」や「プロデューサーズ」「ミス・サイゴン」「オペラ座の怪人」など、どんどんミュージカル映画が創られることを期待したい。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]