エンターテイメント日誌

2002年08月18日(日) 邦画界のヒーロー見参!<ピンポン>

もしこれを読む貴方の近くで映画「ピンポン」を上映しているのなら、悪いことは言わない。いまやっていることを全てうっちゃって直ぐ映画館に駆けつけろ。これは掛け値なしで青春映画の傑作であり、今年の邦画界のとてつもない収穫である。

ペコこと主人公の星野と、スマイルこと月本との友情関係を見ていると、なんだか映画「GO」で窪塚くんが演じた高校生と映画半ばで刺殺される友人との関係を彷彿とさせるなあと想っていたら、脚色したのがどちらも宮藤官九郎だった。全く性質の異なる原作から、きっちりと自分の持ち味を主張して、それでいてどちらも超一流のエンターテイメントに仕上げるのだからこれは桁外れの才能である。原作漫画の力も大きいのだろうが、印象に残る綺羅星の台詞の数々にも惚れたゼ。

「GO」に比べると、窪塚くんは今回少々オーバー・アクトかなあという気もしないではないが、とにかくこの映画は脇のキャラクターが傑出している。クールなスマイルも恰好良いし、敵対するドラゴンこと風間、アクマこと佐久間などひとりひとりが魅力的にしっかり描き込まれているからこそ主役が立つのである。見どころはクライマックスのシンクロ場面だけで、人物描写が薄っぺらなあの「ウォーター・ボーイズ」との格の違いがここにある。それぞれの役者がまた良い。特に夏木マリ演じるオババがハードボイルドで粋だねぇ。宮崎駿作品「天空の城ラピュタ」のドーラ、あるいは「千と千尋の神隠し」の湯婆婆を彷彿とさせる雰囲気があった。「ルパン三世カリオストロの城」の台詞じゃないけれど<なんて気持ちの良い連中だろう!>

曽利文彦監督は映画「タイタニック」でCGを担当した経歴を持つ人らしいが、今回の映画では卓球のボールをCGで処理しながらそれが非常に自然に映画の中に溶け込んでいるのは見事であった。SFXは観客にそれと気付かせないことこそに価値がある。テンポも良くて爽快な風が吹き抜ける青春映画に仕上がっている。最後には不覚にもホロリとさせられちまった。鬼の目にも涙。

それにしてもこの映画のエピローグがイギリス映画「リトル・ダンサー」に呼応していると感じたのは僕だけだろうか?


蛇足:
実はご本人に直接お知らせしようと考えたのだが、メール・ボタンも見当たらず連絡の手段がないのでこちらにメモとして書かせておいて頂くことにした。「CARLITO'S WAY」という日記サイトに「小さな恋のメロディ(1971)」の監督がアラン・パーカーだという記載があったのだが、これはどうも勘違いされているようである。この映画でパーカーが担当したのは脚本だけであり、彼が劇場映画の監督としてデビューするのは1976年の「ダウンタウン物語」。「小さな恋のメロディ」の監督はワリス・フセイン。ちなみに僕もこの「小さな恋のメロディ」は名作だと想っている。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]