エンターテイメント日誌

2002年07月19日(金) ジブリ・ブランドに騙されるな!

どうも世間一般の認識として、スタジオ・ジブリ作品=良心作、傑作アニメーションというイメージが定着しているようである。確かに宮崎駿監督は稀有の天才であり、過去・現在を通じて世界NO1のアニメーション作家であり、凡作は皆無である。それを認めるのは僕も決してやぶさかではない。

だが忘れてはならないのはジブリ作品=宮崎アニメではないということだ。どうもここに混乱の原因があるようで、だからあの退屈な駄作「おもひでぽろぽろ」や「平成狸合戦ぽんぽこ」(いずれも高畑勲監督)がジブリという冠だけで宮崎作品と勘違いした観客が劇場に詰め掛けてヒットしたのだろう。しかし、いつまでも騙され続けるほど日本の観客も馬鹿ではない。大胆にも「スター・ウォーズを叩きのめす!」(徳間社長談)と鼻息も荒く、エピソード1の公開時期に勝負を挑んだ「ホーホケキョ となりの山田くん」(これも高畑勲監督)は製作費の半分も回収できないという惨憺たる興行成績に終わり、配給した松竹も経営破綻に追い込まれる事態となった。

さて、今回は「猫の恩返し」である。しかも因縁のスター・ウォーズとの対決となる。「猫の恩返し」はご存知の通り、ジブリ作品「耳をすませば」と原作者が同じで、この二作品は姉妹編となっている。しかしこの両者には大きな違いがあることは見逃せない。「耳をすませば」は監督こそ故・近藤喜文さんだが製作総指揮・脚本・絵コンテ・キャラクターデザインを一手に引き受けたのは他ならぬ宮崎駿さんであり、つまりは宮崎さんは演出をしなかった<だけ>で「耳をすませば」は実質的に正真正銘の宮崎アニメなのである。そうそう、主題歌「カントリー・ロード」の日本語歌詞まで宮崎さんが担当している。なんというワンマン(笑)!

それに対してこの夏の新作「猫の恩返し」は宮崎駿の名前が前面に出てはいるものの、実は宮崎さんがタッチしたのは<企画>だけに過ぎない。あとは若い人に任せ、若い人を育てるという方針で製作されているわけだ。だから「猫の恩返し」は決して宮崎作品ではない。ここを勘違いすると映画館で貴方はきっと苦い想いをすることになるだろう。

僕が「猫の恩返し」予告編を観て感じるのは、まず今回のキャラクター・デザイン(特に人物)が決定的に駄目だということ。魅力に乏しいのだ。背景画も含めて絵全体がお世辞にも綺麗とは言えず、雑な印象が強い。大体ジブリで下働きしている若い人に、宮崎さんのように独創的な才能を持った天才がいるとも到底考えられない。いや、ジブリに限らず世界中を見渡してもそう何人もいるものでもないだろう。だから僕は「猫の恩返し」を敢えて観には行かない。この僕の悪い予感が的外れであることを祈るのみであるが、さて実際映画館でご覧になった方の感想はどうだろう?

最後に興行成績予想を。「猫の恩返し」は「となりの山田くん」程悲惨な動員記録にはならないだろうが、逆に「耳をすませば」並みのヒットも期待できないだろう。その両者の中間くらいの成績が妥当な線ではなかろうか?


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]