エンターテイメント日誌

2002年06月21日(金) ジブリ美術館紀行

東京出張の合間を縫って、三鷹の森ジブリ美術館を訪ねた。実は「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」の宮崎駿さんが念願の夢を実現したこの美術館へは半年以上前から行きたいと真剣に検討していた。入場前売り券には日時指定がありローソン・チケットで購入できる。しかし予定している日の1ヶ月前から購入しようとしても平日にもかかわらずいつも完売。今回こそはと気合を入れて3ヶ月前からチャレンジし、ようやく獲得できたのであった。この美術館のチケットをめぐっては、前売り券を100枚以上購入しYahoo!オークションを利用して高価で転売しようとした主婦が逮捕されるという事件まで発生しており、なかなか大変な騒ぎになっている。

美術館のある三鷹市までは新宿駅から快速で20分。駅からはネコバス(「となりのトトロ」に登場)のデザインをあしらった巡回バスが出ている。美術館は建物のデザインも宮崎さんが手がけていて非常に凝った作りになっており、内部にも迷子になるような仕掛けが施され、なかなか愉しい。

入り口で手渡される入場券はジブリ作品のフイルムの一部であり、どの作品が当たるかその場にならないと分からない。マスコミ向けの開館お披露目の日、ある女性が自分の入場券を透かして見て「あ、ハズレ!だって『となりの山田君』だもの。」と言っていて、その傍で高畑勲監督が固まっていたという笑い話があるのだが(^^;、僕にはその女性の気持ちが痛い程よく分かる。世間では「ジブリ作品」とひと括りに呼ぶが、宮崎駿作品と高畑勲作品では全然中身が違う。僕は宮崎さんは世界を見渡しても20世紀最高のアニメーターだと信じて疑わないが、高畑アニメには嫌悪感しか抱けない。ちなみに僕の入場券は高畑作品「おもひでぽろぽろ」のフィルムだった。大外れ(笑)。非常に落胆したのだが、思い直して近い将来リベンジ・マッチをすることを堅く誓ったのであった。次回こそ宮崎作品が当たりますように!(という訳で、このジブリ美術館の使用済み入場券をご希望の方があればメールにてご連絡下さい。送料のみ負担して頂ければ差し上げます。でも多分、誰からも申し込みはないだろうなぁ。)あ、ちなみに高畑勲さんは岡山県岡山市の出身で、実は僕の小学校の先輩だったりする。僕が小学校4年生のとき、創立百周年記念という行事があって、卒業生として高畑さんが来賓として来られた。そして「私が仲間の優秀なアニメーターと組んで創った作品です」と上映して下さったのが「パンダコパンダ(脚本・画面構成は宮崎駿さん)」であった。これは面白かった。

animationの接頭語animは「動く」という意味であり、動物のanimalも同様である。そしてアニミズム(animism)にも繋がっていく。ジブリ美術館にはこの、animへの憧れと悦びが濃縮されてぎゅうぎゅうに詰まっている。とくにゾーエトロープ(連続する絵を動かす装置)の部屋における創意工夫の面白さには興奮し、圧倒された。これは各自、ぜひご自分の目で確かめられたし。さらに別の部屋では過去の宮崎作品の生の絵コンテ、イメージ・ボード、原画、動画、背景画などが所狭しと陳列されていて、その眺めは壮観である。屋上には「天空の城ラピュタ」に登場した(実は宮崎さんが演出したテレビ作品「ルパン三世:さらば、愛しのルパンよ」にも登場する)ロボットの原寸大??のフィギュアがあって、これも見物であった。ただし、次々とその前で記念写真を撮る人が後を絶たないので、じっくりと鑑賞することは困難なのだが。ぼくはそのロボットを前にして思わずラピュタに登場する秘密の呪文「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール(我を助けよ、光よ蘇れ!)」と呟いていた(笑)。美術館の喫茶店「麦わら帽子」で出る飲み物のストローに、天然の麦を使っているというところにもこだわりを感じた。

ただ、残念だったのは美術館では月代りでオリジナル短編アニメーションを上映しているのだが、現在上映中なのは「くじらとり」という作品で、この絵に余り宮崎さんらしさを感じなかったことである。現在「となりのトトロ」の番外編とでも言うべき「メイとこねこバス」という短編が製作中だそうで、完成披露は10月予定とか。ぜひその時は美術館を再訪したい。

そうそう、余談だが僕が一番好きな宮崎作品は断然「天空の城ラピュタ」である。これはアンナ・パキン(「ピアノ・レッスン」)他の豪華吹き替え陣で英語版が既に完成しており、音楽監督の久石譲さんは米国のオーケストラを起用してサウンド・トラックを録音し直しているのである。しかしこの英語版、未だに北米での劇場公開もビデオ・リリースも決っていない。是非今年、全米公開される「千と千尋の神隠し(英語題名:Spirited Away)」が大ヒットして、その波に乗ってラピュタの劇場公開も決りますように。

ところで僕は今年の夏のジブリの新作「猫の恩返し」を観に行く気は毛頭ない。だって理由は明白、宮崎さんの監督作品ではないから。予告編を観たが、大層退屈そうな作品であった。キャラクター・デザインにも全く魅力が感じられない。ジブリ作品=感動作・名作という図式は単なる幻覚に過ぎない。短絡的思考で騙されないよう気をつけましょう。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]