HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2006年02月01日(水) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『北風のうしろの国』(その2)

☆ダイアモンド

主人公の少年の名前は、「ダイアモンド」と言います。 本人は、父親が操る老馬のダイアモンドじいさんから名付けられたと思い込んでいて、それを誇りにしています。
美しく吹き荒れる北風と行動を伴にしているときはさして思わなかったのですが、「北風のうしろの国」から帰ってきてから、私はやっとこの名の素晴らしさに気が付きました。
物語の後半は、19世紀のロンドンの辛く貧しい暮らしの現実の中で語られます。

ガス灯に照らしだされた部屋はじつにみじめったらしく、荒涼としていた。
汚らしい、がらんとした、絶望がでんと腰を据えている部屋だった。
その部屋の真中の腰かけにダイアモンドはすわって赤ん坊に笑いかけた。
赤ん坊はかれの膝の上で明かりの方に笑顔を向けていた。

暗く荒れ果てた室内に、きらきらと澄みきった輝きが溢れるよう。
彼が、「ダイアモンド」が居るからです。
「ダイアモンド」という言葉は、置かれる場面が暗ければ暗い程光を放ちます。
重苦しい日々の生活の中でも、少し普通と違ったダイアモンドの言葉や行いに周囲の人々は心打たれます。

家には優しい母あるいは姉が居りながら、この世のものではない美しい女性に異界に誘われ彷徨う少年といえば、泉鏡花の数々の作品が思い出されます。 鏡花と同じように幼くして母を失ったマクドナルドも、女性を畏れ、崇拝しているようです。
幼いダイアモンドも貧しい少女に対しては驚くような騎士道精神を発揮し、空に輝く星を管理する男の子の天使達は、女の子の天使達の姿をじかに見る事はできないのです。がんばれ、男の子。

近所の美術館でラファエル前派展があったとき、美しい母親が幼い息子のベッドに頭をもたせかけているペン画が展示されていました。
他の大量の色彩豊かな作品のポストカードと一緒に買い込んだ、この作品のポストカードも今手元にあります。
画家はもちろん、アーサー・ヒューズ。
まるで『北風のうしろの国』の一場面のようです。

(ナルシア)


『北風のうしろの国』著者:ジョージ・マクドナルド/ 訳:中村妙子/ 出版社:ハヤカワ文庫

2005年02月01日(火) 『大事なことはみーんな猫に教わった』
2002年02月01日(金) ☆『アメリ』のパンフレット。
2001年02月01日(木) 『The Aardman』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.