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夢の図書館新館

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-- 2005年03月14日(月) --

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『猫にかまけて』その2

いまでは大猫と中猫の2匹(本書によると2頭と呼んだほうが 猫に敬意を払えるのだが)に囲まれて暮らしている私も、 かつてはそんなことできないと思っていた。

家の中で猫を飼える状況は来ないと思っていたし、 猫アレルギーが治る見込みもなかった。

本書のハイライトとも言えるヘッケとナナの逸話に 琴線を弾かれたので、私の逸話もたどってみよう。

繰り返すが、猫にはほんとうに不思議な話があるものだ。 これは以前、猫やのどこかに、かいつまんで書いた話である。

ちなみにここから後の話は、本書とは関係がないので、 また変わり者が何を言うか、と興味を持った方だけどうぞ。

もういつのまにか10年も前になってしまったが、 うちに「チータ」というオスの仔猫が来た。拾われ子である。 いまの「チャイコ」(「茶い子」ともいう)と同じような 赤虎猫である。 ついでに言えば、拾われた場所もチャイコと近い。

拾われた時点でおそらく感染していたらしく、 3歳を待たずして猫白血病が発症し(2度目)、他界した。 あげく、これではあんまりだ、と思った。 町田さんではないけれど、当時私は、いまもって考えても ハードすぎる遠征の仕事を受けていて、日中ほとんど家に いられなかった。猫の最期をほとんど病院に任せてしまい、 数時間を看取るぐらいしかできなかった。 愚かにも、仕事にかまけていたのである。

その猫生の短かさに納得できなかった私は、 「チータ」であった魂を、猫として呼び戻そうとした。

逝ってしまった魂を、再びこの世界、この家に。 といっても私には反魂の奥義はそなわっていない。 ただただ、見えない世界に向けて祈るくらいしかできない。

チータが家に来た日は、9月下旬だった。 私は猫ぎらいの家人を謀るため、1日違いの祖母の命日を、 猫が来た日ということにしていた。 家人は妙にそこでほだされてしまい、それほどの反対は 聞かれず、チータはうちの猫になった。 ただし、座敷には上げてもらえない外猫として。 近所はそれなりに避難所が多いが、つらい思いをさせたと思う。

チータが逝ったのは、5月下旬。 転生の準備と猫の妊娠期間、生まれてからの月齢を計算して、 だいたい、9月のその頃ならば、 「つじつま」が合うのではないか、と考える。 すでにこのあたりで常態を逸しているが、それがペットロスの怖いところだ。 何がなんでも、呼び戻すことになっている。

そうこうするうち、7月だったか8月だったか、 書店で偶然のように手に取った絵本が、 サトクリフの『小犬のピピン』。 あの英国歴史小説の大御所が、死んだ愛犬の魂を再び 子犬に生まれ変わらせて自分のもとへ来られるようにする(した) という話を書いている。 もちろん、表向きはフィクションとしてである(では裏ではどうなのか?)。 目頭が熱くなりながらも、勝手に、 見えない世界からの励ましと受けとる。

『ピピン』の場合でも、私が一番不安だったことが 問題になっていた。誰でもそうだろうと思う。 つまり。 どうやって、生まれ変わりの子(とみなした子)を見つけるのか、 という問題である。 もし、ミスジャッジをしてしまったら? ピピンの場合は、遠くない場所で同じチワワ種に生まれ、ちゃんと 元の飼い主のところに戻ることができた。

しかし、チータはどうだろう。 ピピンみたいに賢くはないかもしれない。 わかりやすく、同じ柄の猫になってくるのだろうか。 それとも、別の方法で? こんなことはもちろん、いくら考えても答えは出ない。 ただ、9月ということをしっかりと心に決めていたので、 8月には某霊験あらたかなお宮へお参りまでして、 なにがしかの感触を得たような気分になる。 しかしとりあえず猫をもらう当てはなかったから、里親譲渡会の日程を調べ、 電話をしてみた。毎週やっているとのことで、 9月下旬になったら、そう、ちょうどまた祖母の命日が近くなるころ、 出かけることに決める。 理由は言わずと知れた、猫ぎらいの家人を謀るためである。 何度も同じ手にかかるか、とも思うが、同じことが2度あれば尋常でなく、 今度の新入りは、何かの使いとなるかもしれない。

そしてその8月、ふっと胸の内に浮かぶ言葉があったのだが、 深く考えもせず、笑い飛ばしていた。

→その3へつづく

(マーズ)


『猫にかまけて』著者:町田 康 / 出版社:講談社2004
『小犬のピピン』著者:ローズマリ・サトクリフ / 訳:猪熊葉子 / 岩波書店1995

2002年03月14日(木) 『指輪物語』(その4)

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