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夢の図書館新館

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-- 2005年02月25日(金) --

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☆ピーター・パンゲラン!その1「フック」

ピーター・パンのことは、 私の古い記憶のなかにもあるのだけれど、 そのピーターは、ディズニーのキャラクターである。 それはそれで、ネバーランドへの夢を与えてくれたし、 幼くしてロンドンへのイメージもつくられたのだが、 バリの『ピーター・パン』にこめられた、 ”いわく、いいがたいもの”は、そこにはなかった。 そこにいたピーターは、むしろ大人になろうとする普通の 少年だったから。

だからこれから書くことは、かなり新しい記憶のなかに住んでいる ピーター・パンのことだ。

大人にならない永遠の少年、ピーター・パンを愛する人たちは、 世界中にいるだろう。ピーターの世界を、もうひとつの別世界として 活字にすることに熱意を燃やす人もいる。 『フック』(映画にもなった)のテリー・ブルックスは、 サー・ジェームズ・バリの『ピーター・パン』への限りないオマージュを 真っ向から注いでいる。 古きワインの精を、妖精の粉にかえてまとい、おとずれるネバーランド。

『フック』の主人公は、過去を忘れて大人になり、家庭をもった 仕事中毒のピーター・バニングことピーター・パン。 もう一人の孤独な主人公は、タイトルどおり、ジェームズ・フック船長。 ああ、フックのファースト・ネームはジェームズだったのだ、 バリ卿と同じく。と本書を読んで気づいた。 ちなみに、「礼儀(グッド・フォーム)の港」に停泊するブリガンティン型帆船「ジョリー・ロジャー号」の船長室には、フックお気に入りの作家、サー・ジェームズ・バリの 本があるという逸話も披露される。 じつは『ピーター・パン』を読んだときには、 鈎の義手をもつフックにはあまり注意を払っていなかった。 だって、犬のナナを普通に養育係にしているような家の子どもたちの 「家出話」を読むのだから、海賊どころではなかったのだ。

ここ、別世界でのフックは、時間のないネバーランドで 宿命の対決相手を待ち続けている、誰も信じられない海賊王であり、 唯一信じて待っていたピーター・パンの、あまりな変容ぶりに 最悪の裏切りを与えられてしまう男である。

そして、フックのそばにさえ『ピーター・パン』のエッセンスである 「お母さん」という芯の糸が、しっかりと編み込まれている。

ピーター・バニングは、過去の記憶を持っていない。 しかし、フックに愛する(愛情不足の)子どもたちをさらわれてしまい、 いやおうなくネバーランドへ連れ込まれる。 かつてネバーランドでピーターとともに暮らしていた「迷子の男の子たち」は、 帰ってきた大人のピーターに、とまどうどころか、信じようともしなかった。 フックが信じがたかったように、誰より、ピーター自身が自分のなかの 少年を忘れ果てていたように。

ただ妖精のティンクだけが、中年のピーターに、 かつての冒険とありあまる熱の名残を見ていて、いつもながら損な役回り。 それでも、ティンカー・ベルに当たったピンライトは、 作者の想いを綺麗に伝えてくれている(読んでのお楽しみ)。

自力で飛んで戦うための大改造特訓のあげく、 やっとピーターを認めた子どもたちは、大喜びでさけぶ。
「パンゲラン!ピーター!」

それにしても。
フックがピーターの息子ジャックをそそのかした言葉には、 うーむとうならされる。本質をついたピーター論を見せられる思い。

「なぜ親はわが子を嫌うのか」

(マーズ)

「ピーター・パン」その1
「ピーター・パン」その2


「フック」テリー・ブルックス著 / 二宮馨訳 / ソニーマガジンズ1992

2004年02月25日(水) ☆映画・オブ・ザ・リング『王の帰還』(その一)
2003年02月25日(火) 『末枯れの花守り』
2002年02月25日(月) 『スター☆ガール』

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