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夢の図書館新館

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-- 2004年07月29日(木) --

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『歌うダイアモンド』

『家蠅とカナリア』『ひとりで歩く女』などの 名作長編ミステリで知られるマクロイは、 短編の名手でもあった。 ということが、よくよく納得できる短編集。

タイトルの「歌うダイアモンド」、 「Q通り十番地」、「ところかわれば」など、SFも配した 8編の短編に、中編ミステリ「人生はいつも残酷」を加えた9編。 1940年代から1960年代にわたって書かれた作品の それぞれがマクロイの顔であり、作家としての スタンスを、しっかりと発信している。

SFがこんなに多いのにも驚いたが、エキゾティシズムあふれる 「東洋趣味(シノワズリ)」が、短編としては 最も知られているというのも興味深い。 この自選短編集のなかでは、本作は明らかに異質だから。

個人的には、ミステリ作品よりも、 近未来の食管理社会の恐怖を描いた『Q通り十番地』や 滅びてゆく世界への愛を歌った『風のない場所』などの SF作品に、強い引力を感じた。

とりわけ、「風のない場所」は、女性作家ならではの 澄みわたった洞察と、生命への無償の愛に裏打ちされ、美しい波紋を残す。 タイトルからは、よどんだ空間を想像していたが、 まったく逆の意味であった。 解説によれば、「風のない場所」は、後にヘレン・クラークスン名義で 『The Last Day』として長編化されているという。

それにつけても、 入手しながら読みかけとなっている『家蠅とカナリア』を 早く読みたいのだが、先にこの短編集を読んだことで、 マクロイという作家の多彩さに触れてしまった。 1992年に世を去った作家の、今日いまなお世界に問いかける まなざしへの敬意を新たにしている。 (マーズ)


『歌うダイアモンド』著者:ヘレン・マクロイ / 訳:好野理恵 他 / 出版社:晶文社2003

2003年07月29日(火) 『魔術師のおい』
2002年07月29日(月) 『グリーン・ノウの魔女』(グリーン・ノウ物語5)

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