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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年06月06日(金) --

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「くつなおしの店」

「時の旅人」や「グレイ・ラビット」シリーズの
アリソン・アトリーの短編絵本。
繊細なタッチの挿絵は、アトリーのムードをさらに深め、
細やかさでもって、読者を不思議に高揚させてくれる。

どうも昔から私は、靴屋の小人譚に弱い。
あれは、正直者で貧乏な靴屋に、妖精の小人が住んでいて、
一足ずつ作った靴が売れると、そのお金で皮を買い、
またもう一足すてきなのを作って売り、
だんだんにお金が入るというようなお話だった。

こちらは、貧乏で正直な、くつの修理をする店のおじいさんと、
孫のジャック、友だちのポリー・アン、
そして、あの小人たちとはちょっとちがった種族のお話。
なおし屋さんといっても、たまには新調の靴だって作る。
あるとき、おじいさんが作ったのは、まっ赤な、かわいい靴。
そのときから、魔法が働き始める。

300年もの歴史があるイギリスの田舎の古い通りに、
いろんなお店に交じって、くつ直しの店はあった。
いまでは、そんな田舎の庶民御用達のお店たちも、
安さで勝負する工場の製品とは競争できず、さびれる一方だ。
手で作った本物の良さなんて、求められなくなってゆく。

でも、その良さをちゃんとわかっている種族がいた。
人間以外の生きものたちにだって、わかっていた。

正直にこつこつと日々を過ごす人が救われるファンタジーは、
現実のリアルさを織り込むことで、いっそう輝く。

私は靴屋の小人譚を読みながら、
助ける小人になりたいのか、助けられる靴屋になりたいのか、
いつも決めかねてしまう。
でもやっぱり小人かな、純粋に楽しそうだから。
(マーズ)


「くつなおしの店」 著者:アリソン・アトリー / 絵:こみねゆら / 訳:松野正子 / 出版社:福音館書店

2001年06月06日(水) 『二千年めのプロポーズ』 (1)

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