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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年04月18日(金) --

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「もうひとりの私をゆるしてあげよう」

☆誰もが持っている、ACの要素。

自覚のあるAC(アダルト・チルドレン/アダルト・チャイルド)なら
タイトルだけで想像がつくと思う。
副題は『幸せなアダルトチルドレンになるために』。

'97年に出た本書は、臨床心理士の著者による、
アダルトチルドレンの気づきと再生へのガイドである。
ACの実例だけでなく、過去の自分を癒しに出かける方法、
自律訓練法などのテクニックも紹介されている。
80年代にアメリカから入ってきたACの概念と、日本の現状
(当然、過去についても)の違いをふまえながら、
ハンモックのようなフィット感覚で包み込む文章。

実際に、著者を目の前にカウンセリングしているような感覚を持つのは、
柔軟で真摯な文章から立ち昇る「母性」にもよるのだろうか。

本書のなかでも説明されているように、
ACというのは病名ではない。
ACの度合いも人によってさまざまに異なり、
そこに病気か正常かの線引きをすることは、
確かに、学問的には正しくないかもしれない。
それでも、悩む本人にとって、『AC』という言葉に出会い、
みずからのままならない人生の原因を『AC』という
概念に置き換えて見ることは、名もなくわけもわからない
恐怖におびえて人生を転がり落ちていくのとは、
まさに天と地のちがいがある。

「ACという言葉は、多くの人の琴線にふれました。
おかげで、現実に臨床現場で心を病み苦しんでいる人々と
直に接する者にとって、きわめて有用なキーワードとも
なったのです」(/本文より)

ACの多くが、幼い頃、無自覚なACの大人たちによって、
言葉の刃で深く徹底的に傷つけられ、そのことすら抑圧していることを
思えば、言葉による癒しの効果も、広く認知されてしかるべきだろう。

ここに紹介された実例は30代、40代が多い。
やはり、自律的にでも他律的にでも
何らかの形で気づきを得たり、本を読んだり相談に来たりするには、
若さというシールドのある20代のうちはむずかしいのかもしれない。
いつであろうと、気づきが遅すぎるということはないけれど、
世代にかかわらず、ACの広がりを、地球の温暖化よりも身近に
感じている人が増えていけば、どれだけ世界は暖かい場所になるだろうか。
こういう温暖化ならば、環境問題にはならない。
心の闇のすみずみを訪ね歩き、その結果、暖かさのなかに身を置く人が
増えてゆけば、世界は根本から変わる。
誰のなかにも、ACの要素はあるのだから。
他者を責めるよりも、何かがおかしいと気づいた人が変われば、
必ず変化は起こってゆく。

世界がお互いを認め、成熟した「大人」に育たなければ、
争いは終わらないし、国と国との争いは、ACをまた増やす。

『癒し』がブームとなっていることへの批判めいた論調を
メディアで目にすることは多い。そのことこそ偏狭でAC的だと嘆く
著者とおなじく、私も、『癒し』という言葉が好きで、その力を信じている。
私たちの地域でいうところの、『癒る/いやる』とは、
傷や穴がふさがることなのだが、「じきにいやる」といわれたら、
本当にそんな心持ちになるものだ。

人それぞれだが、私は、『アダルト・チルドレン』という複数形を
好んで使っている。
独りではないという思いを込めて。
(マーズ)


「もうひとりの私をゆるしてあげよう」 著者:金盛浦子 / 出版社:KKベストセラーズ

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