HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年04月10日(木) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

「妖魔をよぶ街」(その2)

ネストやジョン・ロスには見える(デーモンにも!)
『喰らうもの』という種族が登場することを書いたが、
そこで関連して思い出すのが、『喰らわれしもの』。
こちらは、グウィンのゲド戦記第二巻、「こわれた腕環」の
主人公となる巫女アルハそのひとを指す呼び名だ。
神によって人間としての過去を喰われ、聖なる存在となった少女は、
迷宮にとらわれ利用される奴隷でもあった。

『喰らうもの』は、デーモンのように『悪』ではない。
ただ、そういうふうにできているだけなのだ。
負の感情や血を好み、光から逃げようとする
見えない存在。
だから、たとえば、怒りや憎しみの感情を発してしまったとき、
見えない『喰らうもの』がエネルギーを吸うために、部屋の隅から
わらわらとこちらへ近づいてきたとしても、
私たちには見えない。

ジョン・ロスの見る予知夢のなかで、悪に征服されたアメリカの都市に
『喰らうもの』は、やはり存在している。そうなってもなお、
奴隷となり、文明を奪われた人々には、彼らの姿は見えない。
彼らの格好の糧となるだろうエネルギーは、
今の世界にもあふれている。

グウィンのいう『喰らわれしもの』と同じ意味あいではないが、
シニシッピー公園をとりまく世界でも、喰らわれた人々は
それぞれの現実を生きている。
母の情夫に虐待されている少年、ジェアード。
過去に起こったことの秘密に隔てられた、ネストの祖母と祖父。
会社と対立する組合員たち。

そんなことを思いながら、
『喰らうもの』『喰らわれしもの』を
この世界にあてはめてみる。
『喰らい』、『喰らわれる』競争に、あまりにもなれてしまった
力の論理が敷かれたこの世界に。
同じように、目には見えないけれど『与えるもの』が、
ただそう生まれついた存在もいるのだと、
身勝手にその姿を思い描く。

ネスト・フリーマーク。
私たち読者にとっても、孤独なジョン・ロスにとっても、
虐待された級友の少年にとっても、
避難所のようなその名をつぶやきながら。
(マーズ)


「妖魔をよぶ街」(上・下) 著者:テリー・ブルックス / 訳:井辻朱美 / 出版社:ハヤカワ文庫FT

2002年04月10日(水) 『時計はとまらない』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.